福取沢~蓬沢

一日休暇を取得して、ほうじょう沢を含めて・・・あわよくば大ヤット沢の下の沢と大せと沢を周遊して・・・福取沢と蓬沢を巡るつもりでいた。しかし、福取沢は源頭部まで滝が続き、最後の詰めも太い笹に阻まれて、遅々として進まず、蓬沢は実に滝が多い沢で、下降方法を考える時間も多くて、これまた時間がかかる。結局、ほうじょう沢出合に着いたのが、二日目の15時となり、ほうじょう沢を源頭部まで往復する時間もなくなってしまい、ほうじょう沢を断念して蓬沢を下降した。

24日(曇時々晴)

加治川治水ダムのゲート前の駐車場から自転車で林道終点に向かう。林道終点では、先着していたキノコ採りの方から、「一昨日入山したが、目的のきのこはまだあまり出ていない」とのことと、「駐車場に停めてあった相模ナンバーの三人組が沢に入った」という話を聞いた。

湯の平温泉までは、ゆっくり歩いて1時間10分で到着。管理人に挨拶をして福取沢と蓬沢へ行くことを告げる。水場「やおきの泉」から露天風呂へ向かう道を降り、湯船の縁を通り抜けて入渓する。

水量は、最も少なかったときよりは多いが、少ない方だろう。温泉付近はやや深くて流れが強いが、左壁沿いを水中のバンドを利用してへつって、屈曲点の河原に至る。徒渉を繰り返しながら、いくつかの深場は腰上くらいまで水に浸かったり巻いたりしながら、福取沢を目指す。頭上高く左壁がハングして覆いかぶさるような1Mの滝も、深い釜に青い水を湛えた2Mの滝も全く手が出ないが、簡単に右側を巻いていく。

深く青い釜の2M滝

流れがおういんの尾根側に膨らんでいる辺りに、開けた河原が広がって、緊張が和らぐが、右へと曲がっていくと再びゴルジュとなる。間もなく蓬沢が出合うが、想像していたよりも狭く険しい渓相の沢だ。白泡となって流れ込む淵の右を巻いたあたりから、谷が狭まってくる。その先は、何か所か少し深い所が見えているものの、概ね膝下位で徒渉して進んでいけそうだ。しかし、福取沢手前にほとんどのパーティが巻いている滝があるので、ここから樹林帯をトラバースして出合まで行くことにした。途中で涸沢をまたいで、特に険しい所もない樹林帯を行くと、少しひらけた福取沢出合に出た。福取沢は開放的な白い小スラブに8M滝を懸けて本流に落ち込んでいる。

蓬沢出合
この辺りから左岸を巻いて福取沢を目指す
福取沢出合の滝

出合の滝の右壁を登ると、さらに4M滝が続いており、そのままブッシュ帯に入って巻いていく。沢に降りようとすると、すぐに小滝と登れそうもない6M滝が見えたので、高巻きを続けて、さらに足下に見えた三つの滝も巻いて、懸垂で沢床に下降した。降り立ったところは、沢床はゴーロ状だが、両岸とも急峻な草付スラブである。

ゴーロの中のナメ滝

ゴーロの中のナメ滝の左側を通過して、谷が左に折れると、落口中央に岩が突き出たような12M滝が現れる。大小の段差があるようなので、水を浴びれば突破できるのかもしれないが、左のリッジ状からブッシュ帯に取付く。ブッシュ帯を斜上していくと、登れそうもない12M滝が続いているので、高巻きを続ける。沢に降りやすい所を辿っていくと、12M滝の上に続いていた二つの滝の上に出た。標高710M、地形図通りに右岸側がやや開けていて、左側に枝沢を分け、沢床はゴーロ状になって右へと曲がっていくところである。

12MCS滝
巻きの途中で見えてきた12M滝

ここからは少し落ち着いて、ゴーロ歩きの合間に時折3~5Mの滝が懸る。とりわけ難しい滝もなく、側壁をへつり気味に登ったり、あるいは小さく巻いたりといった具合で越える。860M付近では右岸にちょっとした草原の台地があったが、台地の上が平坦かどうかは確かめなかった。910M付近は右にカーブしており、左に3本ほど細い枝沢を分けている。

ゴーロ主体の渓相

小滝を過ぎて、左に曲がっていくと、5×8、5M、10Mの連瀑が懸り、まとめて左岸を巻いて、上段の10M滝の落口に立った。ブッシュが手に届くほどの落ち着いた渓相になるが、再び両岸が切り立った岩壁になってくると、右に滝が続く枝沢を分ける。小滝が続き、難しそうな3M滝を前にして、左岸のブッシュ帯に取付く。この先、遠目に右岸支流の滝が見え、1040Mで左に枝沢を分けた直後の等高線が詰まっていることから滝があると踏んで、支流出合の先まで巻くことにした。沢床には難なく戻ることができ、わずかに等高線の間隔が緩む1085M付近に差し掛かる。

5×8、5M、10Mの連瀑
沢床近くまでブッシュが茂るようになってきた

左岸に段丘上の薄い草薮があったので、覗いてみると石も少なく結構平坦である。整地してみると、ちょうどテント一張分の平地が出来上がり、ここにテントを張った。

25日(曇時々晴)

幕場から稜線までは標高差約400M、稜線から蓬沢を下降してほうじょう沢出合までは標高差約700Mである。登り二時間半、降り三時間半くらいで行けると踏んで、6時に幕場を発つ。

1100Mの二俣では、左俣も右俣も源頭の様相かと思われた。右俣へ進み、蓬沢との境界尾根が稜線にぶつかる地点を目指す。小滝を連ねたような12M3段の滝が現れ、さらに5M2段を越えると、連瀑となり最初の3M滝が登れず左岸を巻き、沢身に戻る際には懸垂下降となった。その先も、適当な間隔を置いて2M~7Mの滝が断続的に現れ、思ったより遡行時間がかかる。

1300M付近で左岸に枝沢を分けるが、本流の6M滝が登れず枝沢の15Mの滝を登って、中間尾根の草付をトラバースする。5M滝を二本越えると、さらに流れが二分し、右へ進む。すぐに(5:1)で水量の圧倒的に多い枝沢を分けると、あとは窪を詰めるだけとなる。窪が笹薮に消えると、太さ2cm程の頑強な笹が混じる藪に苦労して、幕場から稜線に辿り着くまでに3時間20分かかった。

枝沢から巻いた滝

稜線上は膝下位のブッシュが茂るが、歩行に苦労するほどではない。烏帽子山から実川山へと続く稜線を一望でき、烏帽子山周辺の荒涼としたスラブ壁が一際目を惹く。登ってきた沢を振り返ると、対岸にはおういんの尾根のなだらかな稜線が目を惹く。

稜線に出て烏帽子山方面を望む

少し稜線上を下降した後、蓬沢へ向かって笹薮に分け入る。笹も灌木同様に斜面下方に向かって伸びているので、下りでは笹薮もそれほど苦ではない。やがて窪の末端に位置すると思われるハゲ地に出ると、そこからは沢型を下降していく。標高差約80M程下ると水が流れ出した。

急峻な窪を下降する

序盤は3M、2Mの小滝をクライムダウンする程度で、このまま楽に下降できるかも知れないと期待したが、次の6M滝が現れると、滝の処理に頭をフル回転させなければならなくなった。6Mと、続く3M2段はブッシュを支点に懸垂下降したが、この辺りはブッシュが使えてまだよかった。次の7Mは適当な支点がなく、左岸のブッシュ帯に取付いて下降するが、さらに滝が続いており、一番下の滝の基部までは草付となっている。点在する灌木を支点に、12Mと28Mの2ピッチの懸垂下降で10M滝の基部に立った。2ピッチ目のロープの架け替えを急斜面で行わなければならず、結構時間を費やしてしまった。

滝が続いて楽な下降ではない
草付の中に連続する滝

ナメの小滝を過ぎ、2MCSはCSに流木をひっかけて支点にして、続く3MCS共々まとめて懸垂下降する。降り立ったところは小ゴルジュとなっており、滝を懸けた沢を左から併せている。すぐに15Mの滝が懸っており、左側の小テラスにハーケンを打って右壁を懸垂下降した。

ゴルジュ
15M滝

ここからしばらくは小滝が続く程度だが、沢床が岩盤のため慎重に降る。1070Mで左から枝沢を併せると、5M、4M、2Mと滝が続き、1040Mでも左から枝沢を併せる。4×10、5Mの滝を懸けて、流れは右へ曲がりながら落ち込んでいく一帯を右岸から巻いていくと、ガレの湧水帯があり、その先で右岸から枝沢を併せる。

5M滝

6Mヒョングリ、3M2段は支点とするに目ぼしいものがなく、大高巻き覚悟で左岸の尾根を目指すが、途中でルンゼがあって滝下に降りることができた。少し開けて、一息つきながらの下降となるが、3M滝をクライムダウンできず、この規模の滝でも懸垂を余儀なくされる。さらに、8M、5M2段ヒョングリ、スラブ状の小滝の連瀑、8M2条と慎重にクライムダウンしていくと、ようやく左から二つの滝を続けて懸けるほうじょう沢と出合う二俣に辿り着いた。この時、既に15時を回っており、ほうじょう沢を登っても、出合の渓相から滝が続くことが予想され、斜度が緩む1100M付近まで辿り着けないかも知れないため、ほうじょう沢往復をほぼ諦めた。

6Mヒョングリ滝
滝が続くが少し開けてきた
ほうじょう沢出合から振り返った蓬沢

それでもあきらめきれず、ほうじょう沢左岸を滝上まで巻いて登ってみたが、二本の滝の上にも滝が続いており、この先一層斜度が増すことを考えると、ここで完全にほうじょう沢を断念した。

出合の先には、また滝が懸っている。この10M滝の左岸寄りの壁をクライムダウンすると、しばらく開けた谷がまっすぐ伸びている。まっすぐな谷を行くと、右側に小さいながらも砂地があり、さらに斜面寄りは奥行き1Mくらいの段丘になっているので、この砂地にテントを張った。流木も豊富に転がっており、この日は焚き火にありつくことができた。

ほうじょう沢出合から10M滝を下降した先の幕場

26日(曇一時雨)

天気予報によれば、下越地方は昼前から昼過ぎにかけて雨とのこと。できれば、降り出す前に本流を通過して湯の平温泉まで行きたい。

幕場のすぐ下流は、ゴルジュの入口っぽい雰囲気だったが、雰囲気だけで、小滝を二つ過ぎると開けてきた。拍子抜けしそうなところだったが、すぐ先が2段の滝になっている。上段7Mは左側をクライムダウンする。中段はテラス状になっていて、小釜があり、右岸の小リッジ状の岩盤が小釜を抱え込むように降りてきている。下段は水流を二分する15M滝で、右からブッシュ帯に取付くことができ、右岸を巻いて基部に降りた。

水流を二分する15M滝

右岸から枝沢を併せて左へ曲がり、左岸から枝沢を併せて右へ曲がると、ゴルジュとなり、滝を連続させて一気に高度を下げていく。ゴルジュ入口付近は凹凸の多い岩盤のナメ状で、2M滝を下降し、大きな石の落込みを懸垂で降りると、少し先で20Mの滝を懸けて一気に落ち込む。左岸の壁を3M登ると、そこは滝の左岸に張り出した小尾根の上で、尾根上には樹木があるものの、下部はかなりの高度差の間草付となっている。ロープを結束して一端を沢身に投じて沢身に届くことを確認してから、懸垂で滝下に降りた。

20M滝左岸を懸垂下降する

下方を臨むと、手前は右壁がハングして覆いかぶさり、その先で流れが右へ屈曲している辺りでは左壁がハングしていて、井戸の底にいるかのような心境になる。ハングした壁の基部には、4×8のナメ滝と小滝が続き、左岸の岩盤上を巻くように降る。ハングした左壁の下を過ぎると、上部がナメ状の10M滝が懸っている。左岸の草付をトラバースすると、ルンゼがあって滝下に続いていた。ナメとなった滝下で水流を渡り、続く10×8は右岸の岩盤と草付との境目をクライムダウンした。

井戸の底にいるかのようなゴルジュ
ゴルジュ中の斜瀑
ゴルジュ中の10M滝
この滝の基部で水流は右へ曲がる
ゴルジュを振り返る

ハング壁はなくなり、圧迫感は薄らいだが、ゴルジュは続いている。10Mの大CS滝の左岸を巻いて基部に降りると、さらに10M滝が続いている。クライムダウンは困難なので、支点になるものを探していると、10cm位の太さの木の枝に古い残置シュリンゲを見つけ、これを支点に懸垂下降した。小滝二本と5M滝を下降し、10M滝の右岸を巻くと、本流右岸の斜面がだいぶ近くに見えるようになってきた。

10M滝

このまま出合まで行けるかと思ったが、流れは狭い岩壁の間に滝を懸けて落ち込んでおり、左岸の樹林帯から巻くことにした。樹林帯に取付くと台地状になっており、谷底を見下ろしながら行くと、出合を確認できた。ここで沢に降りるより、樹林を歩いた方が早そうだったので、本流が広い河原になっているところまで、台地を歩いた。

狭い岩壁の間に滝を懸けて落ち込んでいく

河原に降りた後は、往路を逆に辿って湯の平温泉までは25分程だった。出合を前にして雨が降り出したが、本降りにはならず、温泉に着く頃には止んでいた。

往路で会ったキノコ採り、湯の平山荘の管理人、赤谷林道で会った仙台の登山者の話から、22日から25日山登魂のパーティ3名が飯豊川本流を遡行したようだ。

 

遡行図:福取沢蓬沢

山行最終日:2016年9月26日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
24日:加治川治水ダム(6:55)-加治川ダム(7:55)-湯の平温泉(9:05/25)-蓬沢出合(10:15)-福取沢出合(11:05)-最初の高巻終了7M滝上(12:00/20)-710M付近(13:10)-1085M付近幕場(16:05)
25日:1085M付近幕場(6:30)-稜線1500M(9:25)-蓬沢源頭の窪の末端1450M付近(10:00)-1150M付近(12:05)-ほうじょう沢出合(15:00)-785M付近幕場(15:30)
26日:785M付近幕場(6:05)-飯豊川本流(10:00)-湯の平温泉(10:25/50)-加治川ダム(11:55)-加治川治水ダム(12:45)
地形図:二王子岳・蒜場山
報告者:長島