赤石沢

昨年の集中で、つつの倉沢を下降して権現沢を遡行している赤石沢だが、今回は出合から本流筋であるいぼの沢を遡行して、地蔵岳に詰め上がった。好天に恵まれて、久々に穏やかな沢をのんびりと遡行することができた。

3日(晴)

新潟下越、山形置賜、福島会津の各地方の天気予報は晴れ。天気に関する憂いは全くない。現地へ向かう前からわくわくしてくるような好条件だ。前泊は道の駅あいづにて。朝になってから、山都を経由して飯豊トンネルを抜けて大日杉へ向かう。大日杉に古巻さんの車をデポして、長島の車で滝川の林道終点付近へ移動する。滝川を遡行した時と同様、林道が本流方面と浅股沢方面へ分岐する広場に車を停めた。

停めた車を後にして、のんびりと林道を行き、橋を渡ると鍋越山への登山道に入る。ボサが煩く、入渓前から朝露でずぶ濡れになる。堰堤脇を過ぎると、ボサは落ち着いてくるが、湿地状になった所が多く、足元が泥に潜る。黒松沢が近づいたところで道から逸れ、少し藪を漕いで出合いに降り立つ。

何か所かに少し深くなった所や落ち込みがあるものの、ほとんど河原状の穏やかな流れを遡行していくと、20分程度で赤石沢出合となる。出合の様子は、赤石沢に滝川が流れ込む感じで、赤石沢の方が低い流れとなっている。水量比は(1:1)くらいだ。赤石沢にはいってもしばらくは平凡な渓相が続く。

黒松沢出合から赤石沢出合の渓相

700~800Mくらい遡行すると、沢幅が狭まって落ち込みが出てくる。やがて、沢床を赤ワインのような色の岩盤が占めるようになる。この辺一帯の岩盤が沢の名前の由来なのかもしれない。標高500Mで左岸に枝沢を分けて落込みを過ぎると、正面に真ん中が窪んだ奇岩が見えてくる。流れは奇岩の左を巻くように幅を細めて小滝となって落ち込んでいる。右岸をへつっていくと、奇岩の窪んだ部分がポットホール状になっているのが見えた。プールの縁を巻いて通り過ぎ、右岸に台地を見て、幾分流れが速い所を通過すると、非常に穏やかな渓相の河原となる。

赤い岩盤が見られるようになる
落込みも顕著になってきた
真ん中が窪んだ奇岩

570Mで出合う右岸枝沢が近くなってくると、赤石沢を遡行していて最初の滝らしい滝である、釜を持った幅広の3M滝に迎えられる。右壁と落口を橋渡しするかのように倒木が横たわっていたので、右壁に取付いて倒木を渡ることにする。カメラを庇いながら壁に取付くと、手に取ったホールドが剥がれて釜に落ちたが、何とかカメラを持った手を宙に突き上げて、カメラの水没は免れた。滝上は小ゴルジュとなっており、奥に滝が見えている。ゴルジュは入口に瀞を構えるが、あとは深くもなく簡単に通過できる。見えていた滝は枝沢に懸る滝で、本流は右壁に2Mの滝を懸けて落ち込んでいたが、左側を難なく通過できた。

落口への架け橋のように倒木が架かる3M滝
3M滝に続く小ゴルジュ

降り注ぐ陽光と樹林の影が作り出す、ハイコントラストな谷を行くと、やがて樹林は退き、巨石帯となる。巨石が減ってきて、河原状になると、間もなく大釜を構えた12M逆「く」の字の魚留滝に達する。やごう沢出合あたりで昼食を摂るつもりだったが、少し時間がかかりそうなので、魚留滝の釜の前で休憩を摂った。釜の周囲は滝の飛沫が待っており、火照った体に心地よい。逆「く」の字に折れた上部はナメ滝状の滝となっているようだ。滝は左壁を登れそうなので、食後に空身で偵察に行く。案の定バンド状になっていて、簡単に登れるので、荷物を背負って偵察したルートを登った。屈曲点で少し水を浴びるものの、上部も問題なく登れた。滝上は5Mくらいの瀞の奥に2M滝が懸る小ゴルジュとなっている。右岸を簡単に巻いていくと、やごう沢出合だった。

魚留滝
左側のバンドから魚留滝に取付いて登る
魚留滝上のゴルジュの滝は右岸を巻く
屋号沢出合付近

出合い懸る5M滝は右から巻く。いくつかの小滝を越えると、つつの倉沢が左岸から(3:1)の水量比で出合う。この沢を下降してきたときには、出合付近の河原に泊まったが、この日はそんな河原があるとは思えない小さな沢のように見えた。ここから権現沢出合まではかつて遡行した区間である。2~3Mクラスの滝を登ったり巻いたりと、概ね以前遡行したのと同じようなルート取りとなったが、今回は水量が少ない分迫力も少なく、楽々と越えていく。ひらけた河原となり、谷が右へ曲がっていくと権現沢の出合となる。水量比は(2:3)くらいで、やはりいぼの沢が本流という感じだ。

つつの倉沢出合から権現沢出合へ向かう途中の2MCS

いぼの沢には、出合の少し奥に5M2条の滝が懸り、さらに2条に分かれ左に4M斜瀑、右に5M直瀑が懸る。いずれも、左から、右からと簡単に巻いて越え、さらに3MCSを越えると、谷が開けてきてゴーロが続く。幕場がいたるところに出てきそうな気配だが、河原はなく、大きな石が累々と続く。左岸に枝沢を分けると、左岸に増水時の水の通り道があり、その右側に少し平坦そうな草叢を見つけた。草を踏み倒してみると、石も少なく結構平坦だったので、整地してみると、なかなかいい幕場になった。乾いた薪も豊富で、労せず火を熾し、満点の星空の下で快適な一夜を過ごす。

いぼの沢には行ってすぐの5M滝を巻く
5M2条の滝 左の水流は4Mくらい
開けたゴーロ

4日(晴)

幕場を後にすると、間もなく左岸に枝沢を分ける。本流はここからゴルジュ状となりその奥に12Mの滝が懸って遡行を阻んでいる。滝の基部まで偵察に行ってみると、基部の右側壁から巻きを開始できそうだったが、安全策を取って出合付近からブッシュ伝いに尾根状を登って滝の落口に出た。この尾根はぶどうの蔓が多く、非常に厄介だったが、少し未熟だが見事に実ったぶどうの房に目と舌を楽しませてもらった。

12M滝

しばらく段差の大きなゴーロを行き、尚もゴーロ帯を遡行して2M、5×4と続く滝を越えると、(2:3)で水流を分ける奥の二俣となる。5M滝の懸る右俣へ進むが、相変わらずゴーロが続き、(3:1)で右に枝沢を分ける。尚もゴーロを行くと落水の奥に洞穴を持った5M滝に迎えられる。匿名が穴の中を覗きに行くが、奥は無いようで、空身で人が二人くらい並んで入れるくらいのようだ。この滝は両壁が狭まっているので、つっぱりを交えて両岸のスタンスを拾って登った。

5×4の滝
水流の裏に洞穴がある5M滝

滝上で流れは(1:10)に分かれるが、本流には滝が懸り、その周囲も傾斜が急な草付なので、ここから枝沢へ進む。左岸からのトラバースを狙うが、なかなか好適なポイントがなく、枝沢の窪が消える直前まで来て、ようやくトラバースに取付くことができた。結構登った気がしたが、意外にも本流は近く、すぐに水音を聞くことができた。本流に降り立つものの、両岸のボサが煩くて、あまり快適とは言えない。やがて水流も笹と灌木の藪に消え、そこからは樹林帯の薄い藪が続き、さほど労せずに地蔵岳山頂の広場に飛び出した。

ボサが煩くなってきた
地蔵岳山頂に詰め上がった

山頂で、ほんの一時、周囲の景色を堪能して、大日杉へ向けて登山道を降った。途中、長之助清水で水を汲んで昼食を摂り、約1時間半で大日杉に着いた。大日沢で靴を洗って、古巻さんの車で滝川へ向かった。

赤石沢は、樹林の中をゆったりと流れる沢で、滝もそれほど多くない。懸る滝も処理が難しいものはなく、詰めの藪漕ぎも楽なので、初級者を連れての泊まり山行に好適な沢と言える。

 

同行者の記録

遡行図

山行最終日:2016年9月4日
メンバー:長島(L) 古巻 匿名
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
3日:林道分岐(8:10)-黒松沢出合(8:35)-赤石沢出合(8:55)-魚留滝(12:05)-つつの倉沢出合(13:20)-権現沢出合(14:00)-840M付近幕場(14:50)
4日:840M付近幕場(7:10)-地蔵岳(11:00)-大日杉(12:35)
地形図:叶水・岩倉・飯豊山
報告者:長島