白川 かれまつ沢~大又沢御沢右俣

中一週を挟んで再び白川を訪れる。今回は白川上流域では最大の支流、かれまつ沢を遡行する。かれまつ沢を遡行すると、登山道に詰め上がるが、尾根の反対側の小沢を下降して大又沢に降り、翌日御沢を遡行するという、小振りな沢の継続プランだ。

26日:

大日杉に着く頃には、夜中に降っていた雨もあがったかのようだった。小屋の脇を通り過ぎて、吊橋を渡って山菜道を行く。前回は、五段山へ向かう登山道と別れて、次の沢型を横切る所で道を見失ったので、今回は沢型を少し下ってみるが、やはり道は発見できなかった。しばらく上流へ向かって歩けば道に合流できることは分かっていたが、杉林を歩きにしたき沢の出合より下流で沢がW形に蛇行する辺りへ降りて入渓した。

しばらく遡行すると、小雨が降り出す。こぐら沢出合までは平凡な河原が続く。先々週より沢床の石が茶色くなっているように思える。苔のラインからは若干増水しているようにも思えるが、先々週より水量が少なく感じられる。

こぐら沢を過ぎると、沢筋はゴルジュの様相を帯びてきて、神滝6Mが懸る。右岸より近づいていくと、泡立つ釜の流れ出しが少し浅く、対岸に渡れそうなので、右壁のバンドに取付いて神滝を登ることにする。やはり水量は減っている。流れをまたいでしまえば、思った通り簡単に神滝を登ることができた。神滝の先には、陰滝、鳴滝と続くはずだが、1Mくらいの落込みが3段続くだけだった。前回神滝を巻いたところから見下ろした通りである。陰滝、鳴滝はこの連続する落込みを称しているようだ。この滝場を過ぎると、再び河原となって、かれまつ沢が出合う。

神滝 今回は右のバンドを斜上した

先々週登山道から見下ろした様子と、地形図の等高線の形状から、かれまつ沢の下流域はほとんどゴーロ続きだと見込んでいたが、かれまつ沢に入ると、すぐにほぼその通りであることが確認できた。ただし、落差の小さな滝やゴーロ滝くらいは、それなりに懸っている。

出合から少し進むと、二手に分かれた流れの左側に3M2段の滝が懸り、小滝を過ぎると、8M二条の滝が懸る。下流域では唯一の滝らしい滝といってよい。二条の流れの間の岩を空身で登って、荷物と後続を引き揚げる。下部の取り付きでやや難しいバランスが要求されるが、あとはそれほど難しくない。2Mくらいの小滝を三つほど越えていくと、右岸に開けた葦の斜面が広がる。穏やかな雰囲気なので、ここで小休止する。

出合付近に懸る3M滝
8M2条の滝
8M滝を越えると開けた渓相になる

尚も小滝の流れを進むと、左岸の枝沢の出合にも葦の斜面が広がる。ここから荒寥としたゴーロが続く。やがて左右に崩れた斜面と岩壁に挟まれるように、ゴーロ滝が続くようになるが、岩の間を縫って簡単に抜けることができる。右手にイタドリの台地が見えてくると、910Mで左岸に最大の枝沢を分ける。

ゴーロが続く 巨岩も多い

ナメ滝や6M、7Mの滝を越えると、左右交互に崩れた斜面を見る。小滝を5つ過ぎると、沢が左に曲がった先に、12M滝が懸る。滝上の流れと並行する左岸のルンゼを登って、流れとルンゼを隔てる尾根に乗るが、上流にはさらに12Mくらいの滝が見えたので、尾根上を進んで、12Mくらいの滝の上に懸る3M滝の上に降りた。ルンゼを詰めても同じところに出たようだ。ナメ滝を越えると、1260M付近で右岸に枝沢を分ける。この辺りのルンゼ、小尾根、沢の入り組み方が面白い。

左岸に枝沢を分けたあと最初の滝 7×8 3段
12M滝 右側のルンゼから巻いた

枝沢を分ける辺りで右に折れ、その後左へとカーブしていく辺りから、2M~6Mの滝が次々と現れて、直登したり、小さく巻いたり、忙しくなってくる。次第にボサが煩くなってくるが、開けた草原に出る。笹薮を避けて草原の斜面を登り、最後に少し笹を掻き分けて進むと登山道に出た。

水量は減るが源頭まで小滝が続く
詰め上がった草原

藪が薄い所を探して、登山道を15Mくらい地蔵岳方面に歩いたところで、尾根の反対側へ下降を開始する。ブッシュを掻き分けて下降していくと、1330M付近で大又沢に注ぐ枝沢の窪が現れた。

窪に降りて、しばらく沢筋を下降していく。6Mスラブ滝を左岸から巻いて、次に5M滝をこれまた左岸から巻き始めたところで、沢に戻るのをやめて、このまま樹林帯の斜面を下降することにした。沢を下降していくと、斜度が増してくるので、忙しくなりそうだし、大又沢には出合の少し上流に滝が懸っていたからだ。時間も押しているので、できるだけ滝は登りたくない。少しでも上流に降り立つように、トラバース気味に下降していくと、最後は懸垂無しに大又沢の沢床に降りることができた。5M滝は懸っていたが、右壁から簡単に越えることができ、滝上には河原が広がっていた。

下降した大又沢の枝沢
二俣付近の5M滝

河原を30Mくらい歩くと、御沢出合で、少し御秘所沢に入った小石の平坦地にタープを張った。

二俣(御沢と御秘所沢の出合)の幕場

27日:

朝起きて、周囲を見渡してみると、大分木々が赤や黄色に色づいてきているのに気付く。幕場を後にして、御沢に入ると2~3Mの小滝が続く。

御沢は出合から小滝が続く

5M滝を見下ろしながら、左側の傾斜の緩い岩の斜面を登ると、沢は左に曲がって、岩壁に囲まれたポケット状の空間となり、そこに9Mの直瀑がすっきりとした白いラインを描いている。側壁はかなり立っていて難しそうなので、左岸のルンゼから高巻いて、ブッシュ帯から懸垂で滝上に降りる。

左側が緩い傾斜の5M滝
9M直瀑

次々と連続して現れる2M~4Mの滝を快適に越えていくと、5Mの直瀑に脚を止められ、右岸を巻く。じめじめした草付を少し登って樹林帯に取付くまでが、僅かな距離だが少し悪い。

9M直瀑を高巻いた後も滝が続く

少し大きな釜に流れ込む樋状の小滝を抜けると、河原が広がる。簡単な2Mと4Mの滝を越えると、間もなく両壁が狭まってきて、壁間いっぱいに水を湛える釜を持った落込みがある。あまり暖かいとはいえず、濡れたくないので、右壁を登って高巻く。落ち込みの上に懸垂で降りると、間もなくゴルジュは終わり、沢は右へとカーブを描く。

2M-4Mと続く滝を登る

右岸はやや傾斜が緩く、円形競技場の観客席のような感じで高度を上げている。5月にスキーで来たとき、一旦稜線へエスケープしたところのようだ。思った通りここが大滝で、3Mの前衛滝の奥で、大滝が左壁から豪快に宙に水流を放出している。そして、正面には荒々しいルンゼが伸びている。前衛滝の手前まで戻り、一年草がびっしり茂っている右岸のルンゼを末端付近まで登って、大滝を巻く。巨岩が積み重なるゴーロにさしかかると、そこは二俣だった。左俣は、出合に二つの滝を続けて懸けて、右俣に注いでいる。

円形競技場のような空間から少し奥まった所に懸る15M大滝

右俣へ進むと、河原が続くが、小滝を過ぎると、大滝同様に左壁から15Mのスラブ滝が丸みを帯びた水流のラインを描いている。そして正面にはルンゼが伸びる。大滝とよく似た位置関係だが、今度は全体的に斜度が緩く、穏やかな印象を受ける。少し戻った所から右岸のブッシュ帯に取付いて、スラブ滝を巻いた。

15Mスラブ滝が目に入ってくる

河原となって蛇行すると、小滝の連瀑、4M、3M、2Mと簡単な滝が懸る。大きな滝を越えて穏やかになってきたと思っていたが、意外にも側壁が立ってくる。ゴルジュの中の7MCSは登れず、右壁の枝沢沿いを登って樹林帯に入って、枝沢を横切ってから懸垂下降で滝上に降りた。3MCSを越えるとゴルジュを抜ける。

4M滝

尚も滝は懸るが、斜度の緩い滝がほとんどである。両岸も次第に開けた草原になってきて、20Mや30Mのナメが出てきて、穏やかな雰囲気になる。左岸に(1:2)で水量の多い枝沢を分けると、平凡な窪状の小沢となり、次第に尾根との高度差を埋めていく。適当なところで、右岸の草原に上がって登山道に出た。

両岸ともだいぶ開けてきた
やがて窪状の流れになる
草原を横切って登山道を目指す

切合小屋まで、約10分。切合小屋で昼食を摂って、大日杉へ下山した。御沢は短いので、10時半には切合わせ小屋に着くと思っていたが、意外に滝が多く時間が懸り、先々週と同じような時刻になってしまった。

登山道を切合小屋へ向かう

 

同行者の記録

遡行図:枯松沢御沢

山行最終日:2015年9月27日
メンバー:長島(L) 古巻 匿名
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
26日:大日杉(8:00)-入渓(8:30)-ひがしたき沢出合(8:40)-かれまつ沢出合(9:30)-標高910M付近(11:10)-標高1150M付近(12:00/12:15)-登山道(15:05)-大又沢御沢出合(17:00)
27日:御沢出合(7:00)-二俣(9:50)-登山道(12:00)-切合小屋(12:10/12:30)-地蔵岳(14:05/14:25)-大日杉(16:00)
地形図:飯豊山・大日岳・岩倉・川入
報告者:長島