頼母木川 禀次郎沢(右俣)

胎内川流域で計画した沢では、最後の沢である。過去2年雨に祟られて、なかなか実行できずにいたので、三度目の正直と言ったところか。今年も天気予報はあまりよくなかったが、何とか遡行できると見込んで実施に踏み切った。

頼母木川は胎内川最大の支流である。奥胎内ヒュッテのすぐ上流で胎内川と別れ、足ノ松尾根の末端で足ノ松沢を分けた後、胎内尾根と足ノ松尾根に挟まれた領域に多くの枝沢を刻んでいる。これまでの遡下行によって、本流域は、上流部の沢よりもむしろ下流部から中流部にかけてのゴルジュ突破や雪渓処理が核心であるという印象を持った。

14日:

奥胎内ヒュッテ手前の駐車場から、入渓点の堰堤を目指して歩く。一般登山者は、足ノ松登山口までシャトルバスを利用することが多いが、加治川流域でのアプローチを思えば、大した距離ではない。

切通しの堰堤の手前は、水の流れが2013年と変わっているようで、堰堤のハシゴに取付くのに腰まで水に浸からなければならなくなっている。堰堤を越えて沢に降りると、水量は平水以下のようだ。

切通しの堰堤が頼母木川の入口

両岸を見上げれば険しいゴルジュだが、平水以下なら、しばらくは水線通しに問題なく歩ける。堰堤を越えてから、まず谷は左に折れ、その後二回目に右折するところにガスが立ち込めて雪渓らしいものが見えたが、右岸にブロックが残っているだけで、その脇を通り抜ける。やや開けたところから左に折れると、狭いゴルジュとなるが、何もない。

一旦狭隘なゴルジュとなるが流れは平坦

狭いゴルジュを抜けると、深い釜を持った2M幅広の滝が懸る。一昨年同様左のバンドに乗って越える。河原を進むと、左岸枝沢の滝に取付いている3人組のパーティがいた。目指すはその隣の本流のスライダー状の滝の奥だが、ルートが被るので、彼らが登りきるのを待ってから、枝沢の滝の下部をトラバースして、スライダー状の滝を巻いた。

最初の滝は釜を持った幅広の2M滝

この先は井戸の底のようなゴルジュで、途中4回ほど屈曲しているが、いずれも屈曲の外側の壁がハングするように抉れている。2013年は二つ目の屈曲点まで進んだが、その先は水量が多くて途中から高巻いたところだ。ゴルジュの中の瀬を進み小さな落込みの三つめの屈曲点は左壁に取付き、そのまま左壁をへつって4つ目の屈曲点を通って、3M滝の左壁に取付き、そこを直上して、ゴルジュを抜けた。行ってみればあっけないものだったが、前回行けなかったところだけに、嬉しい。

覆い被さるような右壁のゴルジュ

この先しばらくは、ゴーロの中に小滝と瀞や釜が断続する。550M付近で、やや開けたところに雪渓が出てくるが、問題なく潜り抜けた。雪渓の真下には少し大きな淵があった。少し先で右折すると再びゴルジュとなり、小俣沢が出合う。

小俣沢の先も2Mクラスの滝と釜が断続的に現れる。狭まった両壁の間いっぱいに流れる滝と瀞は、泳ぎたくないので右岸を巻くが、ここには踏跡がついていた。

河原、瀞、2M前後の滝が交互に続く
この短いゴルジュは巻いた

さらに両岸高く狭くなった中に小釜が続き、クランク状に曲がって少し奥まった所に15M滝直瀑が懸り、足を止められる。少し戻って右岸の枝沢から右岸を巻くか、真横に見えているリッジ状の壁からブッシュ帯に取付いて左岸を巻くか迷うが、左岸のリッジ状に空身で取りつくことにした。途中で岩の段差が無くなってきた辺りが、貧弱な草が生える程度の急な泥斜面で、かなり悪い。慎重にブッシュに手が届く所まで登り、自己確保をとる。ここから荷揚げしようとするが、ザックが岩角に引っかかって揚がってこないので、この悪い壁を登り返したくもないが、仕方なく懸垂下降して、低い位置から小刻みにザックを引き上げることにした。しかし、懸垂下降していくと、登攀中にもかかわらず、先ほどの3名パーティが真下に取付いていた。ハーケンを打ちまくるのは構わないが、危険はむしろ頭上にあると思うのだが・・・。何とか荷物を手元まで揚げて、ロープを頼りに登り返すが、ロープを頼りにした強引な登攀はかえって余計な力を使ってしまい、かなり腕が疲れた。この時から雨が降り始めた。滝上は比較的なだらかなところを選んで懸垂せずに沢に降りた。大きな岩の陰で雨を凌いで昼食を摂る。

15M直瀑

昼食後、釜と3Mの滝を左から巻くと、650M手前の屈曲点に雪渓が架かる。出口と思しき明るい方向に一旦出るが、こちらは枝沢で、再度本流側に30M程潜って雪渓を抜けた。

再び狭まったゴルジュの中、二つほど巻くように釜を過ぎたところで、両壁の間いっぱいに深々と水を湛えた釜をもった小滝に出くわし、雨が強まる中体温を無駄に放出したくないので、ここから右岸の壁を登って高巻くことにする。壁の上には、テラスとまでは言えないが、ブナが生える緩斜面が存在していた。

大きくて深い釜を持った小滝

この頃から雨が強くなってきたので、しばらく様子を見るつもりでタープを張ろうとしていると、一層雨が強くなってきて土砂降りになり、タープを張る間もなくずぶ濡れになった。雨は止む気配もなく沢は濁流と化す。この時点で、タープの下にツェルトを張ってビバークすることに決めた。

雨が降り続けて流れは濁流と化した

15日:

雨は前夜19時頃に止み、沢の音も濁流の音ではなくなっている。念のため沢を見下ろして確認して、行動を開始する。沢が屈曲しているので、少し先の様子を見えるところまでブッシュ帯を進み、しばらく河原が続いていそうなので、直立する樹木を見つけて懸垂下降で沢に降りた。

少し行くと、ガスを纏った分厚い雪の塊が見えてくる。近づいてみると、雪渓を背後にブリッジだった頃の形をほぼ保っているような巨大なブロックが谷を塞いでいる。ここを、潜ったり回り込んだりして通り過ぎると、少し振り向くような位置で、右岸の枝沢が18Mの滝を懸けて注いでおり、本流は釜を持った三段の滝を懸けている。これらの滝は右側を巻き気味に簡単に越えられた。

雪渓とスノーブロックが谷を塞ぐ
亀裂が入った雪渓を足早に潜り抜ける
右岸枝沢の18M滝
本流には釜を持った滝が連なる

しばらく平凡な河原が続くが、再び雪渓が架かる。今度はかなり長そうで、雪渓の下のトンネルは真っ暗である。幸いトンネルは低く、雪渓の足は谷底に届いていいて厚みもあるので、潜ることにする。途中左岸から3本の枝沢を確認する。一旦左岸に口を開けたところから雪渓の上に出てみたが、結局最後まで潜って通過した。地形図と照合すると長さは300Mくらいあったようだ。雪渓の下は終始河原に瀬が続いていた。

潜り抜けたものとしては最長の雪渓だ

雪渓を抜けると、左岸から大きな滝が降り注いでいる。池の沢かと思ったが、ちょっと様子が違う。本流には、やや奥まった所に釜を持った8Mの滝が懸る。この滝は、左壁をへつって釜を巻いて滝の基部に取付き、右壁に飛び移って直上した。

左岸に大きな滝が懸っているところで雪渓を抜けた
8M滝

樋状の2M滝が続き、ゴーロになると、5MCS滝が懸り、谷の左右も大きな岩に塞がれている。よく見ると右側の岩が小さく、ショルダーならなんとか越せそうだが、今回は単独でショルダーは使えないので、右側の岩の前にザックを置き、さらにその上に20cmの石を置いて踏み台にして越えた。

踏み台を作って越えた5MCS

しばらくゴーロを進むと、ようやく見覚えのある池の沢の滝が見えてきた。実際にはこの滝を下から見たわけではないが、この地形はまだ記憶に新しい。下から見上げるのは初めてだが、釜を一つにして見事に本流の滝と池の沢の滝とが並んでいる。本流の滝は7Mで、左壁が登れる。続く8Mの滝も左壁を登ると、昨年池の沢から小尾根を越えて降りてきたところに出る。

池の沢出合

5MCSはやや手前から左側を行き、深い釜を持つ7M3段の屈曲した滝は、空身で左壁を登って荷揚げ、CS滝が詰まった小ゴルジュは、これらを見下ろしながら右岸を簡単に巻く・・・と、この辺は昨年と同じルート取りだ。それにしても、昼間は晴れ間ものぞいて暑くなると言っていた天気予報とは裏腹に、雨が降ったりやんだりで、雪渓の冷気も浴びて全然体が温まらない。ゴーロが屈曲して、本流を右手に分けると、禀次郎沢である。

前回と同じルートで越えた7M3段

直進方向に(1:2)で枝沢を分け、禀次郎沢は右に方向を変える。ブリッジこそないが、両岸には何か所かにその名残のスノーブロックが残っている。

源頭までゴーロが続いていそうな左俣を(1:1)で分けると、まず4M滝が懸る。その先で、左岸の浅いルンゼに僅かに水流を分けて、左に曲がると、連瀑帯となる。核心は最初の12M滝で、空身で右壁の凹角状を絡めて登る。続く4Mは左を登り、あとの3M、1M、5Mは右からだが、難しい所はない。釜を挟んで8Mと5MCSは左岸をブッシュ絡みに巻き気味に越える。

禀次郎沢の二俣
連瀑最初の滝12M
連瀑帯上部の8M滝

一旦ゴーロとなって、左に緩く折れると12M2条の滝が懸る。上部は斜度が緩いが、下部に向かうにつれて急になっている。左側の水流沿いを登れそうだが、水を浴びたくないので、右岸の草付から簡単に巻く。35Mの連瀑帯となるが、側壁の斜度が緩いので、これらは簡単に越えられる。6×8の左側のスラブを登ると、滝場は終わり、穏やかな渓相に変わる。

滝場を抜けた後の渓相

あとは、できるだけ稜線近くまで窪が続いてくれることを期待して歩くのみである。窪が笹に飲み込まれそうになる辺りで、左岸の草原にあがって、草原と笹薮の境目を進んで高度を上げる。最後は笹薮に突入するが、細い笹なので大きな苦労はない。門内小屋から北上してきたとき最初に辿り着く小ピークのあたり、小さな慰霊碑があるところに出た。

藪に消えそうな源頭部

濡れた衣服に冷たい風が吹き付けてくるので、休む間もなく頼母木小屋に向かう。頼母木小屋に着くころに晴れてきた。まだ下山できる時刻なので、予定を変更して奥胎内ヒュッテへ下山した。林道に降りた頃からアブに付きまとわれるが、やはり今年は数が少ないようだ。

 

遡行図


山行最終日:2015年8月15日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 胎内川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
14日:奥胎内ヒュッテ(6:40)-足ノ松登山口(7:25)-堰堤(7:45)-小俣沢出合(9:45)-標高625M付近15M滝上(12:15)-655M右岸幕場(13:50)
15日:655M右岸幕場(5:25)-池の沢出合(7:55)-禀次郎沢出合(8:55)-二俣(9:50)-登山道(13:55)-頼母木小屋(15:05/20)-奥胎内ヒュッテ(18:30)
地形図:えぶり差岳・二王子岳・長者原・飯豊山
報告者:長島

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