滝川(横川) 黒松沢~仕揚(ひあげ)滝沢

滝川支流を遡下行して、ちょうど一周して出発点に戻る計画である。
滝川(横川)流域では、本流の赤石沢がガイドブックに紹介されている。赤石沢は易しい沢だということなので、今回の沢も、地形図上はかなり両岸の等高線が詰まっているところはあるが、それほど厳しい所はないだろうと思って、初級者の参加を募った。蓋を開けてみれば、簡単すぎた感じもするが、山形側の前衛の沢の傾向を掴むには良い山行だった。

25日

アプローチの林道は、河原角の集落までしっかり舗装された道だが、河原角から道幅が狭まり未舗装になる。先に蕨園があるため、道の整備はしっかりしており、特に荒れたところはない。林道は道が滝川を渡るところまで続いているが、今回は浅股沢を下降してくるため、浅股沢出合に向かう道の分岐に車を停めた。

林道は滝川に懸る赤茶色の簡素な鉄の橋の手前まで続いており、橋の先はボサが煩いかつての登山道となる。登山道の踏跡はしっかりしているが、かなりじめじめしていて、沢靴でもなければ歩く気がしない程である。黒松沢出合付近にも似たような橋が架かり、ここで入渓する。

入渓点からみた黒松沢の渓相

しばらく平凡な浅瀬歩きが続く。河原は少なく、蜘蛛の巣が非常に多くて閉口する。やがて緑がかった岩床のナメが見られるようになり、流れの脇にはブナの台地を見る。落ち込みが出てくると、両岸に大岩が門のように配されたカーブとなる。左から小さな枝沢が入り、左岸に岩峰が見える。この辺りから、地形図で両岸が狭まった所が始まるが、谷は意外に広く感じられる。流れの脇には灌木帯があり、灌木帯を挟んで切り立った壁があるからだろう。

緑がかったナメ床
深く切れ込んだ谷の入口

滝を懸けて(2:1)で出合う左岸の枝沢を過ぎると、クランク状に屈曲した小ゴルジュとなる。奥行きは大したことないが、最後に6Mのつるつるの滝を懸けている。ゴルジュ手前の小尾根の灌木帯から、ゴルジュの奥で本流の6M滝と並んでいる支流の6M滝の上に出て、本流側に灌木を掴んでトラバースした。

6Mの滝が懸る小ゴルジュ

小釜を持った落込みが続き、その先にも落ち込みが多い。2M前後の滝が出てくるが、難しい所はなく、やがて(3:2)で左岸に枝沢を分ける。

左岸が下部1Mがハングした岩壁となると、流れは右に折れて、両岸とも岩壁となる。ゴルジュには1Mの小滝と出口に釜を持った4M滝が懸る。右岸に簾状の滝を懸ける枝沢を分け、流れが右に折れると二俣である。水量は(1:3)で圧倒的に右俣が多く、いずれも2Mの滝を懸けている。

右壁下部がハングした壁
小滝とそれに続く4M滝

左俣に入り、3M、4Mを越すと小滝が多くなり、小滝の間に3M、2MCS、4M、6M2段の滝が懸る。標高890M付近で、ナメの続く左俣本流から右岸枝沢に入って、大沢を隔てる尾根の1000M付近に詰め上がった。

左俣源頭部付近

尾根上は藪だが、灌木が生えている向きが一定で、固い木がないため、比較的漕ぎやすい。しばらく尾根上を北東に進んだのち、883Mコル-923.2M小ピークへと続く尾根目指して東よりに下降する。大沢源頭に細かい襞状の小尾根がたくさんあり、位置確認に苦労するが、何度か左(北)寄りに軌道修正して、仕揚滝沢下降予定地点の883Mコル付近に出た。

灌木を掴みながら北斜面を下降していくと、左側から仕揚滝沢の窪が見えてくる。一旦この窪を横切り、次の窪が合流するあたりで、沢に降りた。

幕場を探して、等高線が緩い左岸のブナ林に立ち入ったりするが、なかなかいい場所がない。沢に戻り、8M滝を左岸から右岸に向けて懸垂下降し、4M滝は一旦滝頭まで下降したが、懸垂するには手頃な支点がないので、手前の小滝上まで戻って左岸を巻いた。

8M滝を懸垂下降

560Mで右岸から(3:1)で枝沢を併せると、小さな支流が左右から入ってくる。右岸にちょっとした台地を見つけ、ここを切り開いて幕場にした。4人用テント(カヤライズ)をかろうじて張れる程度だが、まずまず快適。薪もすぐに集まる。湿った薪が多くて、火が安定するまで手がかかったが、あとは問題ない。これまでの行程で、魚が全くいなかったので、釣りはしなかった。もちろん魚もなし。

台地に設営した幕場

26日

この日は、降るだけだし、厳しいところもなさそうなので、朝はゆっくりと過ごす。

地形図通り穏やかな渓相

思った通り、浅瀬と河原歩きが続く。小さなハコが出てきて腰まで浸かったが、悪場というには程遠い。小滝を降り、左岸から明瞭な枝沢を併せると、5M滝が懸る。左岸の台地に直立した木が生えていたので、そこを支点にして滝の右壁を懸垂下降した。下降地点のやや下流には、高さ30Mくらいのスラブに枝沢の水が滴る程度に流れており、5M滝以上に壮観である。3M滝を降るとまもなく浅股沢本流と(1:1)出合う。

懸垂下降した5M幅広滝
右岸のスラブ壁
3M滝 左岸をブッシュを掴んで下降

出合から下流も、ナメと浅瀬と河原歩きが続く。地形図に記された中津川峠越えの山道の踏跡は発見できなかった。やがて葦が繁茂する草叢の間を通り抜けると、出合付近の堰堤が見えてくる。堰堤は切通し型で、中央に魚道がついている。その中央の魚道を下降して、左岸の草叢を掻き分けると、踏跡があり、すぐに滝川を渡る赤い簡素な鉄橋を渡る。橋の先から林道になっており、駐車した分岐まではほんのわずかの距離だった。

両岸に草叢が広がる

 

同行者の記録

遡行図

山行最終日:2015年7月26日
メンバー:長島(L) 高森 匿名
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
25日:林道分岐(赤石沢・浅股沢分岐付近)(8:15)-黒松沢出合(8:40)-560M付近6M滝上(10:00)-二俣の先100M付近(11:30/12:15)-尾根(13:25)-仕揚滝沢下降点883Mコル(14:15)-540M付近幕場(16:30)
26日:幕場(8:25)-仕揚滝沢出合(9:30)-林道分岐(10:40)
地形図:叶水・岩倉
報告者:長島