四郎左ェ門沢~松ノ木穴沢(下降)

今週は、内の倉川最大の支流である、石ミキ沢を登るつもりだったが、週の半ばにかなり雨が降ったことを警戒していた。赤谷のアメダスの観測記録によれば、木曜以降はほとんど降っていないので、入渓可能であろうと思って、内の倉湖のバックウォーターまで沢の水量を窺いに行ったが、湖の水位自体が上がっていたため、沢の水量は分からなかった。そこで、安全策を取って、プールしてある計画の一つである、今回の「四郎左ェ門沢~松ノ木穴沢」に転進した。

12日:

例のごとく豊栄PAで前泊し、休日料金で聖籠新発田ICで高速を降りて、内の倉湖のバックウォーターに車を走らせる。車を停めて、バックウォーターに架かる橋から下を見下ろすと、一瞬水位が低くて地面が出ているかのように見えたが、実は立木の根元も水没する程水位は高く、地面に見えたのは雨で流されてきた枯葉、小枝や泥だった。内の倉川の水量を確認することができないため、この時点で転進を決めて、内の倉湖畔から滝谷新田へ向かうトンネルを潜って、加治川治水ダムへ移動した。

ダム管理棟の脇を通り抜けて、トイレ前の駐車場に車を停める。他に車はない。支度を済ませて、四郎左ェ門沢を目指して、赤谷林道を歩く。湯の平温泉への道を復旧させる気配はまるでなく、新発田市のホームページでは、未だに絶対に入山してくれるなと訴えている。飯豊川上流域へ向かうには、北股川への下降、徒渉、登り返しが必要で、なかなか苦労しそうだ。

加治川治水ダムの湖面

加治川治水ダムも、内の倉湖と同様に、雨で流されてきたゴミが水面を埋め尽くしている。この雨で、雪渓が融けた後に残された沢のゴミは、だいぶ洗い流されたのではなかろうか。

四郎左ェ門沢入渓点付近のゴルジュに残るスノーブリッジ

四郎左ェ門沢は橋の15M程下を流れている。10M程来た方向に戻ったあたりから、ブッシュを伝っていくと、うまい具合に沢床に降りることができた。橋の下を通過すると、両岸切り立ったゴルジュになり、早速小さなスノーブリッジが出てくる。低い位置に架かる手前のを乗越し、二つ目は潜り抜ける。

右岸から10M滝を巻く

落込み手前の釜を腰まで浸かって通過し、もう一つ小さなブリッジを潜ると、3M、4Mの滝をいずれも左壁をへつるように越える。しかし、次の10M2段は登れず、右岸手前から、かなり悪い巻きを強いられた。続く5Mと堰堤もまとめて巻くと、穏やかな河原となる。

何の設備だろう?

左手にトンネルのような人工物が現れると、コンクリートの壁が、二基目の堰堤へと続いている。

開けた河原が続く 雪融け間もない様子が窺える

しばらく河原歩きが続き、470M付近の開けた所には、両岸に雪渓が残っている。480Mで左岸に枝沢を分けると、落込みと小滝が断続的に現れ、釜を持った4M滝と2Mクラスの滝二つを越える。沢床はナメとなっており、左岸からゴルジュを割るように枝沢が流れ込んでいる。

青い釜の3M滝

すぐにゴルジュに突入し、青い釜の3Mが懸る。10Mくらい戻って、右岸を巻くが、傾斜が急で、ブッシュを掴むものの、かなりスタンスに気を遣う。すぐに釜を持った5M滝と、その上にもう一つ滝が懸るが、登れそうもなく、20M手前のルンゼから右岸を巻いて、懸垂で滝上に降りる。

末広がりの5M滝

この後、5M末広の滝をはじめ、点々と小滝が現れ、7M滝を右岸から巻き、釜を持った小滝が懸るミニゴルジュを小さく右から巻くと、(1:3)の水量で右岸に枝沢を分ける。

(1:3)で枝沢を分ける
4段の釜のゴルジュ

4段の釜を持ったゴルジュは、三つめの釜に注ぐ左岸枝沢の滝を中段まで登って、最上段の釜に水を落とす5M樋状の落口に出た。ナメ滝、小滝を過ぎると、710Mの二俣となって、(1:1)で水を二分している。

6M滝

左俣に進むと、すぐに6M滝が懸るが問題ない。河原が続き、すぐに右に流れを分けるが、地形図にはこれに合致する沢形はないので、恐らく豊富な湧水であろう。実際この流れのすぐ脇からも、こんこんと水が湧き出ていた。

削り取られたような斜面と土砂を纏ったスノーブロック

本流を進むと、水が濁り始めて、崩壊したスノーブロックの存在を予感させる。小滝を越えて、谷がやや右にカーブすると、正面にスノーブロックが鎮座している。スノーブロックがあるのは枝沢で、本流は手前で滝となって、左に屈曲していた。

ゴルジュの中に懸る滝

小さなゴルジュの中に小滝が続き、最後は8Mの滝で、バックアンドフットで水流をまたいで登った。続く10M滝は、右壁をブッシュを掴みながら登り、落ち口付近は流れの中にスタンスを得る。

幅1.5Mのゴルジュ 最奥に10M滝が懸る

小滝を越すと、幅1.5Mの袋小路のゴルジュとなり、右壁の奥に10Mくらいの滝が懸る。2MCSを右壁のバンドから登って、雪渓手前まで進んで、ゴルジュ末端の様子を窺うが、登れそうもないので、ゴルジュ入口に戻って、ブッシュ伝いに左岸を高巻いた。しばらく小尾根の稜を登って、頃合いを見計らって左へトラバースしていくと、元の流れに戻ったが、ゴルジュの滝から続いているのかどうかは分からないが、下方はナメ滝状の流となっていた。

この先は何もなく、藪漕ぎもなく稜線直下に至る。左手に広がる小さなスラブをトラバースした後、稜線を越えて、内の倉川寄りへ出た。

稜線上の小さなコルにテントを張れるスペースを得た

師走沢を詰めあがった時のように、ここにも稜線に沿って気が斜面に踏跡が続いている。師走沢と違うのは斜度があって、平坦地が見当たらない点だ。松ノ木穴沢は、地形図で見る限り幕場適地がなさそうなので、できれば稜線付近に幕場を得たいと思って、適地を探しながら大倉方面へと踏跡を辿る。結構斜度があって、適地と言えるほどのところがなかったが、当てにしていた大倉と松ノ木峰のコルに、程よい無木立の平坦地があって、ここを幕場とした。

13日:

下降開始地点付近の松ノ木穴沢

松ノ木穴沢側も、若干ブッシュを潜り抜けるようなところはあるが、藪をこぐという程のことはない。間もなく窪が現れて、枯れた沢形の下降となり、1015Mあたりは湧水帯となっていて、あちこちから水が湧き出して集まってくる。

削り取られたような壁に懸る5M滝

急に前方の視界が開けたかと思うと、5M滝となっており、右岸を巻く。一帯は抉られたような崩壊地となっており、ここからしばらくゴーロが続く。

20Mのスラブ滝の落口

815Mで左からの流れを併せると、滝場となっており、下を覗き込むと、20Mくらいのスラブ滝で、懸垂しようにもロープの長さが足りないので、右岸を高巻くことにする。小尾根まで登ったところで、スズメバチがいたので、これを迂回して尾根の先端方向へ向かう。右手にトラバース気味に下降して行くと、折よく手頃な斜度のルンゼに出て、左俣に降りることができた。

5M滝とその先のゴルジュ

すぐに750Mの二俣だが、すぐに5M滝が懸り、その先つるつるの磨かれたゴルジュとなって先が見えない。すぐに二俣まで戻って、左俣右岸のルンゼを登り、小尾根上に出た。

小尾根から見下ろした松ノ木穴沢 正面の雪渓は枝沢

尾根の反対側にはスラブが広がっている。少し尾根の先端方面に進んでから、ブッシュを拾いながら慎重に下降する。30~40M下降すると樹林帯となり、最後は懸垂で700M右岸の枝沢に降りた。

高巻いたゴルジュの下部に懸る15Mと5Mの滝

スノーブロックを縫って、亀裂が入った小さなブリッジを潜り抜けて、出合に出ると、やはりすぐにゴルジュとなる。

樋状ナメと釜

樋状のナメを行き、5Mくらいの深場をつっぱるようにまたいで過ぎると、連瀑となる。最初の滝を降りたところで、下方に釜を持った滝が続くのを眼下にして、左岸のブッシュ帯に取りつき、4つの滝をまとめて巻いて、懸垂で沢床に戻った。このブッシュ帯は、特に毛虫が多かった。

高巻きルートから見た連瀑

一旦潜りかけた雪渓

5Mくらいの滝をいくつかクライムダウンしたり巻いたりしていくと、沢の屈曲部に巨大なスノーブリッジが架かる。一旦、潜って下流側の末端まで行くが、釜を持った滝が懸り、その先もゴルジュとなっているところまでは見えるが、ガスがかかっていてその先が見えない。釜に飛び込んで滝を下降してしまうと、登り返せないので、戻って高巻くことにする。雪渓の中程に入り込んでいるルンゼを偵察するも、ブッシュ帯に取りつけず断念し、雪渓入口に戻る。左岸から水を落としている、ルンゼともいえるような小さな枝沢を登って、ブッシュ帯に取り付いて、延々とブッシュを掴みながらトラバースを続ける。途中で昼食を摂って、トラバースを再開し、最後は懸垂せずに沢床に戻ることができた。

白い花崗岩の小さなゴルジュ

降り立ったところは河原状だが、すぐに花崗岩の白いゴルジュとなる。2M滝からナメが続き、6×12で終わるこのゴルジュは、この沢の中でも特に美しい。再び磨かれたゴルジュとなり、釜を持った滝が続く。ゴルジュが屈曲しており、先が見えないので、ここも高巻くことにする。延々とブッシュの中をトラバース気味に下降して、最後は懸垂で右岸の枝沢に降りた。出合から振り返ると、本流には、手前から4M、小滝を前衛に持った10M二段の滝が懸っていた。

4M滝を前衛に持った10滝

ようやくブッシュも沢床近くまで降りてきた感があり、緊張から解放される。わずかに河原を行くと、堰堤が現れ、右手にはトンネルのような穴が口を開けている。よく見るとハンドルのようなものが見える。

堰堤 すぐに林道に戻れるわけではなかった
堰堤の右岸は険しいが作業道らしきものがあった

このトンネルの上の急斜面を、ブッシュを頼りに登っていくと、ロープが張ってある明瞭な踏跡に出た。この踏跡を辿っていくと、小さな左岸の枝沢に出て、そこからわずかに河原を歩くと、赤谷林道の橋が見えてくる。手前の堰堤の右岸を少し登ると、橋の袂へ続く踏跡に出た。ここからは、かねてから企んでいたように、道端に生える蕨を摘みながら、赤谷林道をのんびりと加治川治水ダムに戻った。

下流部の河原

 

遡行図:四郎左ェ門沢松ノ木穴沢

山行最終日:2014年7月13日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
12日:加治川治水ダム(7:00)-四郎左ェ門沢に架かる橋(8:30)-入渓(8:50)-標高710M二俣(12:00)-稜線(14:50)-松ノ木峰と大倉間のコル(16:00)
13日:コル(5:50)-標高700M(7:45)-標高550M屈曲点左岸上方50M(11:30)-赤谷林道(13:40)-加治川治水ダム(15:30)
地形図:東赤谷・二王子岳・蒜場山
報告者:長島