師走沢~四十八沢(下降)~要平沢~飯豊沢(下降)

今季初の飯豊での泊り山行だった。加治川治水ダムを起点に、初日は師走沢を遡行し、四十八沢を下降して内の倉川側に泊まり、翌日要平沢を遡行し、飯豊沢を下降して加治川側に戻ってくるという周回ルートだ。焼峰山から赤津山に至る稜線上に位置する四ツ倉を囲むように隣接する似たような規模の沢だが、それぞれ全く異なる性格の沢だった。

28日:

例のごとく豊栄PAで前泊し、休日料金で聖籠新発田ICで高速を降りて、加治川治水ダムのゲート前の駐車場で車を停めた。支度をしていると、2台の車がやってきて、降りてきた3人組はバイクを下ろし出した。声をかけられて挨拶すると、先週内の倉川で歩荷トレーニングをしていた福島の三人組であることが分かった。彼らは湯の平温泉へ行くらしい。先に出発して、師走沢橋へ向かって歩き出すが、途中で三人のバイクに抜かれた。

赤谷林道から見える主稜

朝のうちは晴れていて、加治川上流方面に飯豊の主稜線(北股岳から御西岳あたりだろう)が良く見えたが、残雪がかなりあった。主稜線に突き上げる沢を遡行するには、まだだいぶ早いようだ。

師走沢に入渓

師走沢橋右岸側の袂から堰堤工事道跡のしっかりした踏跡を辿って、二基の堰堤の上流で入渓する。入渓点付近は、ゴーロの中に小滝が断続する平凡な渓相である。樹木が谷筋に接しており、険しさは感じられない。

8M滝

ゴーロを抜けると、左岸に台地のある穏やかな瀬の流れとなる。標高440Mで、左岸に(2:1)で枝沢を分けると、小さなスノーブリッジを潜り抜ける。左に小規模な崩壊を見て、さらに小さな枝沢二本を過ぎると、釜を持った8M滝が懸り、ここから白い岩盤が露出した短いゴルジュとなる。ゴルジュには右岸から滝を懸けて入っている枝沢を挟んで、釜を持った6M滝と2M滝が続き、いずれも左壁から登る。

長さ30M程の雪渓を潜り、出口の4×5を登って雪渓を抜けると、右岸に(1:2)で枝沢を分ける。

雪渓を潜る

標高560M。ゴルジュ地形に小滝が続くが、次第に水が濁ってくる。右岸に枝沢を分けると、再び雪渓が架かり、雪渓の下を窺うと滝はなさそうなので潜ることにする。

雪渓の上流端には登れない滝が懸っていた

60Mくらい進むと出口には崩壊したブロックが散乱しており、ブロックを縫っていくと、登れない6M滝となっており、両岸ともにホールドがない。スノーブロックから雪渓に乗り移り、左岸に渡ってブッシュが雪渓際まで来ている尾根に取りつくと、ちょうど6M滝の上に続くルンゼに出て、これを下降した。

右岸スラブから枝沢を併せる10M滝

滝上にもスノーブロックが散乱していたが、この辺りが濁りの根源だったようだ。小滝を懸けて右にカーブするゴルジュを、4MCSの右壁を登って抜けると、10M滝が懸る。右岸スラブ壁からは、枝沢が滝を懸けて流れ込んでいる。左岸を巻いて滝上に出ると、連瀑となる。

連瀑帯の滝

最初の2Mを左から、続く5Mと8Mは右側を登るが、8Mはちょっと悪かった。さらに4Mを右から、5Mと2Mを左から登ると、流れは二手に分かれて、左の枝沢は5M、8Mの滝が続き、本流は8M直瀑が懸る。

連瀑の途中で下流を見下ろす

8Mの左側壁を登ると、上部は樋状の6×10、3×3のナメ滝が続き、左側を登ると一連の滝に区切りがついた感がある。この連瀑帯の総落差は45Mだった。

上流部の滝

この後も、2M~5Mクラスの滝が10本ほど断続的に懸るが、簡単に登れるか、小さく巻くことができる。標高800M付近で再び長さ40Mくらいの雪渓を潜る。5M、15M2段をともに右から越えて、2M滝を登ると、流れが細くなり湿地のような所に出る。進路が掴みにくいが、左寄りに進路を取るように、一番手前の窪を登っていくと、藪漕ぎなしに稜線に出た。

内の倉川側はすっきりしたブナ林が広がる

加治川側の斜面は藪っぽいが、内の倉川側はすっきりとしたブナ林が広がっている。稜線やや内の倉川側に、踏跡があったが、どこへ続いているのだろうか?

稜線で一服した後、四十八沢へ下降を開始する。ブナ林を下降したい衝動にも駆られたが、稜線直下から窪を拾って下降した。最初は幅30cmくらいの窪に残雪が薄く残っていたが、残雪が途切れると、細々とした流れが出てくる。

四十八沢は上流部の小滝から巻きが多い

2M、2M、7Mと続く滝を左岸から巻いて降りたところで、左岸から(1:1)の流れを併せる。さらに右から細い流れを併せ、直後に(1:3)で左からの流れを併せる。標高900M付近だろう。

12M2段の滝

ここから滝が断続的に懸るが、クライムダウンできる滝は少なく、ほとんど巻くことになる。12M2段と2Mをまとめて左岸から巻き、10Mと10M2段はまとめて右岸を巻いて下降する。

10Mの滝

続く8M、8Mをまとめて左岸から巻くと、次の4Mはクライムダウン、次の15Mと7Mはそれぞれ左岸を巻いて降りた。ここで(2:3)で右から四ツ倉を源頭とする左俣と合流する。

15M滝

この先、尚も滝が続くが、ほとんど巻きとなる。15M、4Mともに左岸を巻き、ゴルジュに連なる小滝、10M2段、3M、10Mもまとめて左岸を巻いて下降する。

ゴルジュに懸る一連の滝を見下ろす

一旦沢に降りたが、直下の7M滝から続く連瀑もまとめて左岸を巻いて下降した。

ここから傾斜が緩くなり、平凡な河原が続く。途中湧き水があったので、水筒と空いたペットボトルに目いっぱい水を汲んだ。沢は崩壊した雪渓のせいで水が濁っているので、貴重な清水だ。

ゴルジュの先が石ミキ沢への出合

標高540Mで左右から枝沢を併せた後、8M滝を左岸から巻いて懸垂で降りたが、それ以降も河原が続く。流れが右へ左へと折れて、ゴルジュになったかと思うと、5M滝ともう一本の滝が懸っており、その先で右から左へと流れる石ミキ沢に出合っていた。少し戻って右岸に取りつき、小尾根を辿って、石ミキ沢の3M滝の上に降りた。

石ミキ沢は濁りが強かった

石ミキ沢の水量と濁りは四十八沢の比ではない。また、かつてあった登山道など、どこについていたのか見当もつかない。道がついていたくらいだから、両岸いずれかの傾斜が緩いか、河原が広いのかと思いきや、両岸ともに切り立って、とんでもない渓相だ。

10Mとその上に続く滝が見えてきた

まともな幕場がなさそうなので、滅入りそうになるが、幕場を見繕いつつ上流へ向かうことにする。谷が右に膨らむようにカーブすると、大きな瀑音が鳴り響いてくる。次第に、とんでもない勢いで水を吹きだしている10M滝が目に入ってきた。よく見ると10M、15Mと続く連瀑で、左側には細い枝沢が20Mの直瀑となって合流している。さらに手前にも右岸から枝沢が入っているので、旧登山道が尾根に向かって登っていく地点のようだ。下流の枝沢の右脇から、斜面に取りつき、滝を懸けている枝沢を横切って、連瀑の上に出た。

枝沢出合付近に架かる雪渓

尚も濁水が奔流する流れを遡行すると、雪渓が見えてくるが、その直前が要平沢の出合だった。

深い釜の4M滝

ほっとしたのも束の間で、要平沢にも早速雪渓が架かっている。幸い小規模だったので、足早に潜り抜けたが、すぐに深い釜を持った4M滝に足止めされる。登るのは厳しそうなので、左岸から巻くことにする。巻きの途中で、ブッシュの隙間から、さらに登れそうもない15M直瀑が見えたので、これもまとめて巻いた。

8M滝を巻き始めたところで雨が降ってきた

一旦沢床に降りたが、スノーブロックを縫って進むと、釜を持った8M滝が懸り、何とか右壁に手がかりがあるかに見えたものの、これまた登るのは厳しそうである。仕方なく引き返して、ここも巻くことにするが、そろそろタイムアップになりそう・・・という頃に、左岸のブッシュ帯に取りついた途端に、雨が降り出した。ここで快適な幕場を諦め、傾斜が緩くなるところまで登り、幾分平坦な場所を見繕ってテントを張った。

幾分平坦とはいえ、斜面なので、とても快適というには及ばない。火も使わずに夕食を済ませ、テントの側壁に半ば立つように眠らなければならなかったが、テントを張れただけでもよかった。要平沢にはこの先にも、幕場適地といえるところは見当たらなかった。

29日:

何とか寝れたが・・・ここから沢へ向かって下降

夜は雨が降り続いていたので、増水が心配された。早いうちに沢の様子を見て、この日の行程を考えようと思い、早出する。

まずは8M滝の上に降りなければならないが、かなり登っているので、滝が見えたらまとめて巻いてしまおうと思って、トラバース気味に下降することにした。半ば思惑通り大きな雪渓が見えたので、その上流を目指して下降したが、降りたすぐ先に滝が懸り、登るにしてもシャワークライムになりそうなので、再び登り返してこれを巻いた。

ようやく沢に降り立って遡行開始

しばらくは瀬が続くが、断続的に強く降る雨と、切り立った側壁のため、安堵感は湧いてこない。

この沢はまだ雪渓が多く残っていた

二つ雪渓を潜り抜けると、標高560Mの二俣で、正面に松ノ木峰へ突き上げる沢を(1:1)で分けている。

高巻きルートから25M滝を眺める

水量が減じるので、少し気が楽になるが、まだ気は抜けない。すぐに雪渓が出てくるが、今度は出口付近に二本の滝が懸っているのが窺える。雪渓の下の滝を時間をかけて登る気にもなれないので、ここは高巻くことにして左岸に取り付いた。この高巻きの途中でも25Mの直瀑が二本続いているのが見えたので、これらをまとめて巻いたため、思いの外、大高巻きになってしまった。

この後、短い雪渓を潜り、4M滝を越えると、(1:1)で右岸に支流を分ける。

10M滝

小滝がいくつか続き、10M滝が出てきたところで左岸を巻き、そのままいくつか続くゴーロの滝もまとめて巻いて、さらにその先の雪渓の先で沢床に戻った。

延々と続いていそうな長い雪渓

平凡になった沢床を左、右、右と流れを分けて進むと、長い雪渓が架かっていて、手前の崩れたブロックを踏み台にして雪渓に乗った。雪渓の途中で、右から飯豊沢へ続くコルに突き上げる沢が、滝を懸けて流れ込んでいた。この枝沢の左岸に取りつき、そのまま樹林帯を登って、稜線上コルのやや西側に詰めあがった。

飯豊沢源頭部は湿地帯が点在する

稜線を越えて、南側へブッシュ帯を下降すると間もなく水流のある窪に出た。窪を少し下ると、湿地になっていて、昨夜からの雨で池のようになっていた。湿地からの流れ出しから、尚も窪を辿ると、やがてナメ状の岩盤の窪になり、さらにナメ滝となって落ち込んでいる。二段のナメ滝の落ち口から、右岸の樹林帯に上がって降っていくと、窪の水は伏流し再び湿地帯へと続いている。枯れた流れに沿って下降を続けると、左側の沢に合流する。

ここから大きな滝が続く

3Mの滝をクライムダウンして、少し進むと、標高740Mで、地形図上等高線が詰まっている所だ。地形図から予想される通り、滝場となっており、最上段の10M滝の落ち口から、左岸を巻きにかかる。滝二つを巻いたところで沢床に戻ろうとしたが、ブッシュが沢床からかなり離れたところで途切れており、懸垂しようにもロープが足りないので、高巻きを続ける。しばらく尾根上を下降したため、大高巻きになった。何本の滝を巻いたかは分からないが、最下段に見える滝は10~15Mくらいの落差があった。

ようやく高巻きを終えて巻いた滝を振り返る

この先、しばらくは小滝が懸る程度で、問題なく下降できる。所々踏跡があり、新しい鉈目が窺えた。沢が大きく右に曲がり始める手前、標高500m付近で再び大滝が懸る。落差は15~20Mくらいありそうだ。左岸には荒々しくスラブ壁が切り立っている。

再び沢は大きく落ち込んでいく

右岸のブッシュに取りつくと、そこにも鉈目があり、鉈目を辿っていくとルンゼに出た。一旦ルンゼを下降するも、上流にも下流にも滝が懸っているので、ルンゼを登り返して、下流の滝の下に出た。

12M-5Mと続く滝を巻いて降りてきた

3M滝の右岸をブッシュを支点に懸垂で降りると、しばらく河原が続く。12M、5Mと続く滝はクライムダウンできず、左岸から巻こうとするが、今度は赤テープと鉈目がある。これを辿ると5M滝の下に出た。さらに河原を下降すると、コンクリートやパイプなどの人工物の残骸が点在し始め、やがて堰堤に出た。

堰堤の左岸を通り抜けて、さらに河原を降っていくと、幅4Mくらいのゴルジュとなり滝も懸っている。滝壺に飛び込んで下降すれば突破できるのだろうが、濡れるのを嫌って、堰堤工事のために使った道を当てにして引き返し、堰堤左岸の樹林を登ると林道に出た。この林道は都沢出合の対岸付近で赤谷林道に合流しており、雨が降ったりやんだりする中、赤谷林道を歩き治水ダムサイトの駐車場に戻った。

師走沢は、明るく、登れる滝を多く懸ける爽快な沢だ。四十八沢も滝が多いが、ブッシュに覆われた印象が強い。遡行していたら登れる滝もあったかもしれないが、ほとんど巻いて下降した。要平沢は、今回の沢の中では異質で、切り立ったゴルジュが続き、滝は少ないものの登れないため、苦労して高巻かなければならない。飯豊沢は地形図では開けた印象だが、意外に両岸の傾斜がきつく感じられた。鉈目のある踏跡が何を目的としたものか気になる。

 

遡行図:師走沢四十八沢要平沢飯豊沢

山行最終日:2014年6月29日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
28日:加治川治水ダム(7:05)-師走沢橋(7:20)-堰堤上(7:35)-標高720M(10:10)-稜線(11:35/11:55)-標高700M(13:25)-石ミキ沢(15:50)-要平沢出合(16:20)-8M滝手前(18:00)-左岸藪中幕場(18:20)
29日:幕場(5:35)-標高670M(9:20)-稜線(11:05)-堰堤(15:10)-加治川治水ダム(16:10)
地形図:上赤谷・東赤谷・二王子岳・蒜場山
報告者:長島