加治川 スダチ沢~水無沢

今回の沢に入渓するにあたっては、アプローチが懸念事項だった。地形図に載っている治水ダムと飯豊橋の間の橋が現存しないことは、前日の偵察で確認した。また、蒜場山登山道からのアプローチも考えたが、かなりの急傾斜を往復することになるので苦労が大きそうである。

飯豊橋から左岸道を歩く

そこで、長い藪漕ぎを覚悟して、飯豊橋の袂から加治川左岸を歩くことにした。結果として、これが吉と出て、橋の袂から水無沢沿いに明瞭な踏跡があり、計画時の気苦労以外は、何の苦労もなく入渓することができた。

取水場だったと思われる落込み

踏跡から沢床に降りると、両沢とも少ない水量で出合っている。水無沢の上流には大きな堰堤が見えた。スダチ沢は出合から導水パイプが上流へと延びている。歩を進めると、小さな落ち込みが3つ続いているが、よく見てみると、前段と後段は小さな取水堰のようで、コンクリートの壁にパイプを接続するためのものと思われる金属の突起物が埋まっていた。

6M滝

最初のうちは両岸ともに急だが緑が茂っており、沢床は平凡な河原だ。ただ、雪崩と雪渓によって荒れており、折れた枝、こそげ落とされた草、泥が目立つ。右岸に切り立つ草付スラブを過ぎると、6m2段と6Mの滝が出てくる。

潜り抜けてきた雪渓

これらを越えると谷底に靄が立ち込め、雪渓が架かる。途中2カ所左側に口を開けているが、右にカーブして40Mくらい続く。出口には2Mナメ滝を前衛に、5×5、4M2条と滝が続き、さらにナメを挟んで2Mの釜を持った滝が懸る。

雪渓が切れると4M滝が懸る

またも雪渓となり、今度は真っ暗なので、ヘッドライトを灯して潜る。30Mくらい進むと、左手前側壁がハングした4M滝で雪渓が切れる。右壁から取り付き、上部は左右の壁に手足をかけて越えた。

さらに3Mナメ滝を越えると、釜を持った2M滝が懸るが、スタンスの位置が高いうえに良い手がかりがなく、簡単には乗り込めない。ショルダーなら難なく取り付けるが、今回は単独なのでそうもいかず、釜の底に石を積み上げて踏み台にして、右壁に取りついた。

中規模の滝が続く

再び雪渓を潜り抜けると、3M~6Mの滝が続き、標高470Mで右岸から滝を懸けて枝沢が入る。本流も小滝を懸けており、すぐ先で左に屈曲して5Mナメ滝を懸けている。水流の右側を慎重にフリクションを効かせて登る。

10M滝を巻く

すぐに5M滝が懸るが、今度は凹凸著しい岩で難なく登れた。イタドリが出てきたりして、幾分単調になった沢筋を進むと、右岸にナメの枝沢を分け、登れない10M滝の前に足を止める。左右を見比べ、左岸からの巻きを選択、ブッシュ伝いに登ってトラバースして、続く小滝の上で沢床に戻った。

流れは岩岳山頂方面に向きを変える

地形図ではここで沢が終わっているかのようにも見えるが、水流は東へ向きを変えて岩岳のピーク付近に続いているようである。

30Mナメ滝

この辺りから、倒木や枝の堆積が多いが、沢床はナメが主体となっている。そして30Mスラブ状の滝となり、細くなった水流の左側を登っていくと、上部は幾分傾斜の強いナメが続いており、ナメを含めて滝と呼ぶべきか迷うところだが、段差がついているところで区切ることにした。

さらに18×20ナメ滝とナメを越えると、ようやく水流も途絶えたので、左岸の樹林帯をトラバースして水無沢に下降することにした。

中間尾根のブナ林

スダチ沢と水無沢の中間尾根はブナが間隔をあけて茂っており、稜には杉が並んでいる。開けていて気持ちいいところだ。しかし水無沢側の斜面に降りると、なぜか藪になる。

藪の薄いところを選んで下降していくと、やがて水流が出てきて、ナメに変わる。

水無沢上流部の小滝

前方が明るくなったと思うと、ナメがすっぱり切れていて滝になっている。右岸をブッシュ頼りに巻き降りる。50Mほど右岸を下降して沢床に戻ると、とうに滝の基部は過ぎていた。まもなく標高670Mで本流と思われる流れに合流する。

懸垂下降した15M2段の滝

さらに、580Mと540Mで左岸から枝沢を併せた後、3Mナメ滝、15M2段の滝が続く。15M滝の方は、慎重を期して右岸を懸垂で降りた。

左岸の草付スラブ 沢床は平凡な河原が続いている

平凡な河原が続き、450M付近で左岸から二本の枝沢を併せると、左岸に草付スラブが見られる。425Mで左岸から枝沢を併せて、少し下るとようやく次の滝が出てくる。5M滝は右岸の小尾根状のリッジを下降し、次の倒木が詰まったゴーロの落込みのようなところは倒木を利用する。

右岸のコンクリート壁

この直後、伏流して枯れた河原歩きとなる。両岸に残る橋桁のような人工物を過ぎると、右岸にコンクリート壁が続く。壁が途切れると、左岸から水流のある枝沢が入ってくる。この枝沢には鉄橋の残骸が架かっていた。

モーターの残骸?

さらに左岸に橋桁のようなものが立っており、その先にも壁がある。

塞がれた洞窟・・・採掘場か?

右手に石で塞がれた洞窟を見ると、沢床にはモーターの残骸や鉱石のような黒い石が散乱するようになる。

下流部の小滝

5Mナメ滝、4Mナメ滝を下降し、右岸に水が滲み出しているスラブ壁を見ると、高さ8Mの堰堤に下降を遮られる。すぐ先がスダチ沢との出合のように見えたので、左岸に上がると、予想通り踏跡があった。踏跡はさらに上にも伸びているので、恐らく先の枝沢の鉄橋の先まで続いているのではないだろうか?
踏跡を朝と逆方向に足早に通り抜けて、飯豊橋の袂に戻った。

スダチ沢は小規模ながら、登れる滝を多く懸けてなかなか楽しめる沢だった。雪崩で荒れていて、美しいと言える渓相ではなかったが、晩夏から秋にかけて、雨で草や泥が流された後に訪れるとよいのではないだろうか? そのまま沢を詰めて登山道で降ってもよいだろう。水無沢は滝も少なく単調で、遡行価値はあまりない。しかし上流には比較的すっきりした樹林となっているので、岩岳へのバリエーションルートとしての価値はあるかもしれない。

 

遡行図

山行最終日:2014年6月23日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
飯豊橋(5:30)-スダチ沢・水無沢出合(5:50)-スダチ沢源頭部830M(8:30)-スダチ沢・水無沢出合上流の堰堤(11:10)-飯豊橋(11:25)
地形図:東赤谷
報告者:長島