裏川 櫛ノ倉沢

アクセスも悪く、下山も悪く、下流域がゴルジュ続きで入渓時刻を選ばないと幕場に困る、と悪条件が揃っていてなかなか実行できずに機会を窺っていた沢だったが、ようやくその機会を得た。今回はかつて属していた山岳会でリーダー会員だった丸山氏とパーティを組むことができ、久々にパーティ山行の利点を実感する山行になった。

 

20日:(曇)
裏川堰堤を集合場所に定めて現地へ向かう。携帯の電波が届かない所なので少し心配だったがお互い定刻には裏川堰堤に到着した。この日の行程は櫛ノ倉沢出合の対岸にあるブナ林の段丘まで山道を歩くのみ。

今年はこの山道を足繁く通った人がいるのだろうか、目新しい目印が付けられていたり、草薮を横切るところでしっかり草が踏み倒されたりしている。要所口までは至って順調に到着したが、ナゴ沢の一本手前の沢を渡った辺りから道が不明瞭になり、ナゴ沢の左岸枝沢に降りて本流との中間尾根を下降して山道に戻った。ナゴ沢から斜上して尾根を越えた辺りから高度を上げることなく段丘目指して真っ直ぐ降った。

下草がなくて平坦なところを見繕って各々ツェルトを張った。

 

 

21日:(曇時々晴)
幕場を畳んで裏川への下降点を探るが、急峻で足下の様子が窺えないため何か所かで下方の様子を覗き込んだ後に30Mロープ2本を結束して懸垂2Pでほぼ櫛ノ倉沢出合の対岸に降り立った。

下降点付近の裏川は両岸切り立ったゴルジュだが、流れそのものは比較的平穏で問題なく徒渉できた。櫛ノ倉沢は二つの滝を連ねて本流に注いでいる。一つ目の滝を左から越え、二つ目の滝も左から釜をへつってそのまま壁を登って越えた。

出合には二つの滝が続いている

 

滝を越えると意外にも穏やかな流れだが、両岸はは結構立っており進むほどに高く険しくなっていく。

二つの滝を越えてからは平穏な渓相

 

倒木の堰を越えてからしばらく順調に進むが、4M滝の釜が深く最初の泳ぎとなる。右岸寄りをへつって泳ぐ距離をできるだけ短くして釜の右岸寄りを泳いで滝に取付いて越えた。右岸に枝沢を分けて、次のCS滝の釜は空身でへつって滝を登った後荷揚げ、屈曲した4M2段の滝の手前の釜で再び泳ぐ。4M2段の滝は下段を右から上段を左から越える。先には大釜を擁する少しヒョングった6M滝が見えてくる。空身で左壁を登って荷揚げして後続を確保する。

静かな流れが一層静かになると泳ぎを強いられる深場だった

 

砂底の平坦な流れの後、白いスラブを浅く抉った18M3段の滝が懸る。水流左側を快適に登る。

18M3段スラブ滝

三つの滝といくつかの淵をへつったり巻いたりして進むと、少し開けて穏やかな雰囲気の4M滝が懸る。しかしこの滝を越えると深い釜を擁する手掛り乏しい5M滝が続いており、4M滝下の左岸ルンゼから三つの滝を巻いた。

4Mの穏やかな滝だが・・・
深い淵を擁するつるつるの滝が続いていて高巻いた

 

さらに三つの滝を越えると10M3段の斜瀑から連瀑となる。3段の滝は問題なく登るが、続く10Mは4Mとまとめて左岸を小さく巻いた。

10M3段の斜瀑

 

再び穏やかな流れとなるが、谷が左に折れたところに両岸逆相で左岸がハングした壁に12M2段の滝が懸る。左岸の小尾根状のブッシュ帯に取付いて登っていくと、狭まった壁の間に釜を挟んで二本の20M滝が続いている。どうやら地形図の滝記号に相当する滝らしい。尚もブッシュ伝いに登っていくがなかなか斜度が落ち着かずトラバースできない。結局尾根上まで登って左側の尾根を下降して、最後は懸垂で505Mで出合う左岸枝沢の出合に降り立った。

地形図滝記号の滝(三連瀑:下段)
地形図滝記号の滝(三連瀑:中段)
地形図滝記号の滝(三連瀑:上段)

 

出合は釜になっており本流には逆相の3M滝が懸っている。中間尾根を乗越して滝を巻いて、幕場を探しながら遡行を続けるが、険しさはないもののゴルジュ状の流れが続く。やがて流木の堰でできた2M滝で足止めを食らう。両岸とも直登は厳しく、一人釜に浸かってショルダーで登ることも考えたが、釜が深くショルダーでも届きそうもない。試案と試行錯誤の挙句、最後は左壁の太さ1cmくらいの灌木の根元にシュリンゲを懸けてアブミとして小さなホールドと併用で側壁を登って滝を巻き、荷揚げの後に丸山氏には滝上にとった支点に掛けたロープで振り子で登ってもらった。

滝上に丁度ツェルトを張れる程度の河原があったので、整地して各々にツェルトを張って幕場にした。入念に石を除去して整地した甲斐あってなかなか快適な寝床になった。

滝記号の滝を巻いて左岸枝沢出合に懸垂下降した
幕場を求めながら遡行を続けるがゴルジュが続く
丸太堰の小滝を太さ1cmのブッシュを始点に高巻いた

 

22日:(曇時々晴)
幕場を後にするとちょっと深い釜を擁する小滝が続く。今回の山行を前にすっかり秋の気候になったので、朝からあまり浸かりたくはない。巻きもさほど大変ではなさそうだったので、少し深そうなところは巻いていく。右岸に支流を分けた後、流れが右に曲がっていく辺りから開けてきて、幾つかの滝を越えるとこびやた沢出合に達した。このあたりが最も幕場に適した区間だった。

丸太堰の小滝のすぐ先の砂地(幕場)

 

こびやた沢出合を過ぎると、穏やかな流れが続いた後10M階段状の滝から連瀑が始まる。10Mと5Mは側壁を直登し、12Mは途中まで右壁を登って途中からブッシュ帯との境をブッシュを頼って登り、続く4Mも同様にブッシュ帯との境を登った。

こびやた沢出合の先に懸る10M階段状の滝
階段状の滝から続く連瀑の三つ目の滝12M

 

間をあけて7Mと2Mの滝を越え、箱淵の3M滝を水中バンドをへつって側壁を登って越えると785M左岸枝沢出合に達する。遡行していくと正面に滝を懸けた左岸枝沢が伸び、滝上でさらに滝を懸けて二つの沢に分かれている。本流は左に折れて6M、5M斜瀑と続いている。

箱淵の左壁をへつって越える
740M 正面に枝沢が伸びて本流は左に折れる

 

さらに4M斜瀑、4Mを越えると沢は右に曲がっていくが、右岸には枝沢の雄大なスラブ滝が目を引く。幾つかの簡単な滝を越え、スラブに懸る三連の2M、3M、4Mの滝を過ぎると正面に雄大なスラブ壁が見えてくる。

770M右岸枝沢の大スラブ滝
スラブ3連瀑を越えると眼前に壮観なスラブの山肌が聳える

 

スラブに向かって伸びていくゴーロの枝沢を分けて沢が左へ曲がると、小滝の後に狭まった壁の間を流下する18M3段の滝が懸る。壁の左側の草付を登って巻く。10M2段と続く2Mをまとめて右岸を巻き、4M、3Mの滝を越えると970Mの三俣状となる。左の支流は穏やかな流れだが、地形図からは少し奥に滝がありそう。この沢を詰めれば下山を短縮できる。正面の沢は出合に滝を懸け地形図に記された1276地点に詰め上がる。この出合には砂地もあって降られなければ三人くらいは横になれる幕場にできる。

870M付近に懸る18M3段の滝
970M三俣状

 

右の本流に進むと四つの滝が懸り、最初の二本はまとめて右岸を巻き、続くCS滝は左岸、最後の7Mは左右とりついてみるもいずれも悪く、試行錯誤の挙句に最後は左岸から草付を登ってブッシュ帯に取付いて巻き、荷揚げした後に丸山氏にはゴボウで登ってもらった。

三俣状の先の4本の滝は全て巻いた

 

1150Mからは1392ピークの南側に詰め上がる沢型を詰める予定だったが、この沢型を見逃してしまい正面からやや左に逸れた沢型を辿ってブッシュ混じりのスラブを詰めて1392ピークの東尾側の尾根に出た。

1150Mから予定ルートを見落とし意図しないスラブを詰めた
予定外のルートを詰めた結果1392ピークが下山ルートに加わった

 

踏跡もない藪を掻き分けて1392ピークを越えて南尾根の1320Mの小さなコルを幕場とした。邪魔なブッシュを少々切り除いたくらいで、やや傾斜はあるものの快適な寝床になった。

 

23日:(曇時々晴)
相変わらずの藪を漕いで尾根を下降する。引上げ沢の屈曲点であり、かつこびやた沢源頭にあたる1000Mのピークから東に延びる尾根からは踏跡がありペースが上がる。770Mコルから白蓬沢を下降して要所口に戻った。

要所口から楽をしようと思ってしばらく裏川を下降し、その後も流れに近い所を進むが、これが裏目に出た。山道に戻ろうと小尾根を登り始めたが、山道を見落として登りすぎてしまい時間をロス、高度を上げ過ぎていることに気付いて小尾根を降り返している途中で山道を見つけてようやく軌道修正した。往路の山道を反対に辿って裏川堰堤に戻った。

西会津のロータスインに立ち寄って入浴と食事をした後、丸山氏と分かれてそれぞれ帰路に着いた。

 

 

遡行図

山行最終日:2020年9月23日
メンバー:長島(L) 丸山
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
20日:裏川堰堤(12:05)-要所口(13:35/50)-櫛ノ倉沢出合対岸台地(16:35)
21日:櫛ノ倉沢出合対岸台地(7:20)-出合(8:15)-18M3段滝上(10:25/35)-地形図の滝記号の滝上(16:15)-C2(17:15)
22日:C2(7:15)-こびやた沢出合(8:20)-735三俣(9:30/40)-960三俣(12:00/30)-1392ピーク東尾根1340地点(14:50)-1392ピーク(16:25)-1392ピーク南尾根1322地点C3(16:50)
23日:1392ピーク南尾根1322地点C3(6:05)-1276(8:00)-引上ゲ沢の頭のピーク(10:00)-焼曽根山北西770Mコル(11:00)-白蓬沢二俣(12:45/13:10)-要所口(14:10)-裏川堰堤(17:10)
地形図:蒜場山・大日岳
報告者:長島

“裏川 櫛ノ倉沢” への2件の返信

  1. 初めまして。
    先日、沢の中で宗像さんにお会いしました。私が山形市在住だと知ると、ぜひとも長島さんに連絡を取ってみてくれ、ということでしたので、メール差し上げた次第です。

    私も飯豊の沢には大いに興味があります。飯豊に打ち込んでいる長島さんのお話、ぜひとも伺ってみたいです。

    9月の中旬に長島さんの記録を参考にして、裏川へ入ってみましたが、アプローチで敢えなく敗退してしまいました。結局、オコナイ沢を詰めて稜線の池のほとりで泊まり、オウデ沢を下降して帰ってきました。
    また出直しです。

  2. 和田様と思われる人のことは宗像氏からメールで伺っておりました。

    裏川流域はアクセスが大変ですね。本流を通して遡行するのはもっと大変でしょうが。オコナイ沢を詰めた後オウデ沢を下降したとのこと、藪尾根下降も大変だったのではないでしょうか。

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