内川 横岩沢

16日(晴時々曇):

12日から長期休暇を取って長期山行を目論んでいたが、最初の三日間は東海・関東・北陸に大災害をもたらした台風19号による雨のため入山を見合わせ、15日は二泊三日の予定で実川に向かったが増水のため入渓後間もなく引き返し、目当ての沢を遡行できないまま日が過ぎていった。休暇五日目にしてようやく日帰りに予備日を見込んだ代替計画ながらも遂行することができた。

中ノ俣川を渡ったところにワイヤーで仕切っただけの鍵もない簡単なゲートがある。そのつもりなら簡単にゲートを開けて通過できるが、下山は岩魚沢沿いの林道に降りてくるか中ノ俣川出合付近に降りてくる予定である上に、林道もゲート手前に車を停めるのにちょうどいいスペースがあったので、ゲート手前に車を停めて横岩沢まで歩くことにした。

横岩沢に橋は架かっておらず、林道を横切るように水が流れて内川に注いでいる。横岩沢の左岸には林道から明瞭な道がついている。恐らく道の行きつく先に堰堤があるのではないかと思って、左岸の道を辿る。400Mくらい行くと道は途切れて沢の対岸に踏跡が続いている。踏跡を辿って連続する小堰堤と切通しの大堰堤を右岸から巻いて入渓した。

横岩沢出合
水は路上を流れている
左岸の踏跡を辿ると堰堤に行き着く

435Mで右岸からこの沢で最大の枝沢を分けるまでは、380M付近でやや狭まるものの開けて穏やかな渓相が続く。400M付近で沢が左にカーブする辺りで左岸に襞のようなブッシュ混じりの小尾根のある大スラブが壮観だった。

開けて穏やかな渓相が続く
380M付近
左岸にブッシュ混じりの襞状スラブが広がる

435Mで枝沢を分けた後再び左岸にスラブが広がる。2MCSを越えるとスラブを流れ落ちてきた枝沢が滝となって水流を落としている。流れが小刻みに左側へ寄っていくように向きを変える中、ゴーロ滝と巨石帯を越えると開けた渓相が一転してゴルジュに変わる。最初の2Mとそれに続く3×5は腰まで釜に浸かって水流右側のスラブ状のバンドを登り、続く3Mは左から越える。

435Mで右岸に分けれていく枝沢
両側にバンドがある2MCS滝
左岸のスラブを流下してきた枝沢の滝
ゴルジュ入口に懸る2Mと3×5の滝

両岸の壁は一気に切り立ってくるとともに壁間2~3Mまで接近する。登れない滝が懸っていたら引き返して大高巻きするしかなさそうな様相である。ゴルジュがクランク状に屈曲すると、右壁に隠れる位置から流れ落ちてくる水流の先端が見えてくる。高まる緊張を楽しみながら水流の正面へ向かうと、2Mの滝とその上に3Mの斜瀑が続いている。窪み状のホールドがある右壁を登っていくが登るにつれホールド・スタンス共に乏しくなり上段の滝を越えることができない。ルートを再検討した後、ホールドは等間隔にあるが外傾しているため敬遠した左壁を登って滝上に降りたものの、すぐに釜を持った2M滝とその先に登れそうもない6Mくらいの滝が見えたので、もとの壁を登り返してさらに高度を上げてブッシュ帯まで登る。なおもゴルジュは続き、点々と滝が懸っているようであるが、何よりも支点を取れるブッシュからは沢床までロープが届かない。

深くて狭いゴルジュの入口
右壁の陰から流れ落ちる滝の基部が見えてくる
3M滝を越えて沢床に降りると、先には2Mに続いて登れそうもない6M滝が懸る

30Mロープ1本で来てしまったのは失敗だったかもしれないと思いつつも、トラバースして下降できるところを探すことにした。ルンゼを三本越えたあたりで、沢には8Mくらいの滝が懸り、その上にも小滝を連ねて左岸寄りにクランク状に屈曲している。右岸の斜度が緩むクランク状の先を目指してトラバースを続けて、小尾根状になったところをブッシュ頼りに下降して、最後は小さなルンゼから沢に降り立った。威圧的なゴルジュは終わっており、両岸はスラブ状の草付に変わっていた。

小刻みに左岸寄りに向きを変える中に滝が続く
最下部には登れそうもない8Mくらいの滝が懸っている
連瀑の上に降りてきた

ゴーロ滝と巨石の脇に懸る「人」の字形の4M滝を越えると、643Mで右岸にゴーロの枝沢を分ける。枝沢を分けた先20Mくらいのところに8MCS滝が懸るが登れない。枝沢出合のやや下流まで戻って、左岸の草付からブッシュ帯に取付いて高巻き8M滝の落口に懸垂下降して沢床に戻った。巨石重なる中に懸る3M2段の滝を右岸草付から小さく巻くと、左岸に滝を連ねる枝沢を分ける。4M2条の滝を右岸ルンゼを少し登ったところから草付をトラバースして巻き、2M滝を越えると715Mで右岸にガレた枝沢を分ける。枝沢の先は稜線直下まで続く襞状のルンゼに続いている。本流方面には右岸の小尾根に下部が隠れているが大きなスラブ滝が見えている。

「人」の字形の4M滝
枝沢出合の先に懸る8M滝
4M2条の滝
稜線直下の襞状スラブへ続く枝沢
大スラブ滝が見えてくる

遠目には登れそうもない滝も近くで観察すれば登れるケースが多々ある。このスラブ滝もその類で、水流右側に広がるスラブに取付くことができれば登れそうであるが、下部1.5Mにホールド、スタンスが乏しい。結局右岸枝沢手前を登って枝沢を渡り、スラブ滝の基部から3Mくらいのところで水流をまたいで左岸のスラブに取付いた。スラブは明瞭なホールドは少ないが、フリクションは効くので慎重に足場を選んで登る。スラブ滝は最初の14×10の落口に小さな釜があって4×3が続き、さらに釜を挟んで5×4が続いている。一連のスラブ滝の一部であるかのように釜を持った5×3が続くが、左岸にスラブ壁は続いておらず水流左側の草付との境目を登って越えた。

大スラブ滝下段の14×10
斜度が緩んだ所で水流をまたいで左岸スラブに取付いた
14×10に続く4×3と5×4を登った位置から滝を見下ろす

両岸の傾斜は緩み開けてきている。登れない滝が懸っていても逃げ場はありそうだとなると緊張感が和らぐ。基部がハングした赤っぽい岩肌の8M滝を右岸のガレルンゼを少し登ったところからガレたバンドを斜上して越え、4M-小滝-2M-2M、2.5M-5×5の二つの滝群を越えると、水量の二分の一、さらに二分の一を右岸の壁から湧き出る水の流れに分けて水量が激減する。できれば水を汲みたいが、本流に流れる水も湧水だったらいいなという薄い期待を持って水を汲まずに遡行を続ける。5Mチムニー状は難しそうに見えたがホールド豊富で簡単に越え、次の8Mチムニー状とほぼ涸棚と言っていい15Mを空身で登って荷揚げするといよいよ水が細くなってきたので、仕方なく染み出して流れてきたような水を汲む。やはり湧水を汲んでおけばよかったと後悔する。

基部がハングした赤っぽい岩肌の8M滝
2.5Mとそれに続く5×5の滝
5×5の途中で右岸から豊富な湧水の流れを併せている
チムニー状6Mの滝
15M涸棚
涸棚を登った所から基部を見下ろす
稜線直下まで続くスラブ
スラブの上端から基部を見下ろす

鍋倉山直下まで続くスラブを快適に登って、山頂よりわずかに東側に詰め上がり、藪漕ぎ5分で山頂に立った。既に15時を過ぎており、稜線上でのビバークはほぼ確実であるだけに、湧水を汲まなかったことが一層悔やまれた。あいの峰を少し過ぎたところで17時、藪の切れ目に手ごろなテラスを見繕ってこの日の行動を打ち切った。

稜線に出ると眼前に飯豊の主脈が広がる
左の末端には飯豊本山が聳えている
あいの峰山頂から少し北に降った所に藪の切れ目のテラスを見つけて泊まった

17日(晴):

幕場のテラス

今日は下山するだけだと思って、日が差して少し暖かくなってから出発する。あいの峰からは断続的ながらも踏跡がみられて、鍋倉山-あいの峰間よりも歩が捗るものの、旧登山道に出た頃には9時を回っていた。690M小ピークまで旧登山道を北上したが、岩魚沢に降る道はほとんど痕跡を残していないことが分かっているので、中ノ俣川出合に向かって尾根を辿ることにした。608M小ピークまで尾根を辿った所で東北東に向かって下降していくと、中ノ俣川に架かる橋のすぐ近くに出たおかげで、駐車地点までほぼ最短ルートで降りてくることができた。中ノ俣川左岸尾根は旧登山道から分かれた後の方が樹林帯であったり藪が薄い区間が多かったため、旧登山道をトレースしている区間よりも歩きやすかった。

旧登山道の尾根
集落がある谷間は雲海に覆われていた
旧登山道の先に続く尾根に広がるブナ林

 

遡行図

山行最終日:2019年10月17日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 荒川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
16日:中ノ俣川出合付近林道ゲート(7:35)-横岩沢出合(7:50)-435M右岸枝沢出合(8:55)-600M付近(11:55/12:10)-850M付近(13:45)-稜線(15:15)-鍋倉山(15:20)-あいの峰(17:00)
17日:あいの峰(7:45)-旧登山道(9:10)-中ノ俣川出合付近林道ゲート(12:00)
地形図:長者原
報告者:長島