裏川 矢沢

裏川最大の支流矢沢を辿った。地形の上では直線的な区間が多いことが目を引く沢である。出合までは先月と同じ区間となるが、幾つか検証したい点や探りたい点があって、幾つかの区間では敢えて前回とは違うルートをとってみた。

 

14日(晴):

今回も五十嵐家住宅付近の駐車場に車を停めて裏川堰堤へ向かった。裏川堰堤の広場には新潟ナンバーの車が一台停まっていた。広場奥の藪を掻き分けてお馴染みになった山道に入るが、毎度のことながらこの藪をかき分けるのはうんざりする。

藪を2~3分で抜けると短い区間だが植林帯となる。その後、小沢を3本過ぎたあたりからボサが煩くなってくる。木の枝にテープの目印が見えてくると、その先はススキが密生する草叢になっている。直進していくと棘のある草が転々と生えていて煩い。草叢の中を下降して一段低い段丘を歩き、再び登り返すとテープの目印があった。一旦草叢は途切れているが、その先から再び草叢になる。今度の草叢は比較的丈の低い蔓草が多いので踏みつけて突っ切ろうとしたが、途中から複数種類の草が入り乱れて進み難くなってきた。再び草叢が樹木に区切られたところで下降し、窪を横切ってから河原に降りた。先月辿ったルートと比較しても、草叢に差し掛かったら早いうちに河原に降りた方がよさそうだった。
河原に降りると間もなく大倉沢の出合を過ぎ、先月よりだいぶ水量が少なかったので、ここからさらに河原通しに白蓬沢出合の要所口まで進んだ。

要所口で段丘にあがり踏跡を辿る。踏跡らしきものは何か所かで分岐しているがいずれも右へ進むとテープの目印がある。要所口を出て二本目の枝沢を渡るとビバークに手頃な段丘がある。その後踏跡は次第に不明瞭になってくるが、分岐っぽくなっているところをいずれも右へ進むと次の枝沢までは何とか踏跡を辿れる。枝沢を渡った直後は不明瞭だが、すぐに踏跡がはっきりして涸沢まで続く。涸沢を過ぎると踏跡を見つけられず延々と藪をトラバースした。ナゴ沢直前で踏跡に合流してナゴ沢を渡る。ナゴ沢を渡った後、尾根を登る踏跡を辿れば櫛ノ倉沢対岸の段丘に藪漕ぎ無しで降りられるし、下降気味に藪を漕げば登らずに段丘に出ることができる。

段丘の先は踏跡はかなり不明瞭になる。しばらく藪漕ぎ状態が続き、400M付近で出合う枝沢は尾根っぽい所を下降すればちょうど滝の上の横断点に降りることができるが、今回は尾根を辿らず上流側に降りてしまったので滝まで沢を下降した。この沢を渡ると踏跡は再び明瞭になる。水無沢手前で不明瞭になるが、適当に進めば段丘に出るので降り過ぎないように注意していればよさそうだ。

今回はオコナイ沢出合まで沢筋を歩いてみようと思っていたので、水無沢を渡った後下降気味に進路をとったが、泊まるのに適したところがあるような雰囲気でもなかったので、結局ブナ入ノ平に泊まることにした。

 

15日(晴):

オコナイ沢出合の手前で右岸に取り付ける場所はないかと思って、幕場から裏川へ向かって下降してみたが、下降したラインのすぐ先に深い淵があり両岸の流れが速く中央は大岩があって取り付けそうもない。下降した斜面は急峻で、上流方向にはルンゼ状に抉れた崖になっていてトラバースもできず登り返した。その後も対岸の様子を窺いながら段丘の縁を進むが、出合の辺りで取り付けるかどうかといった感じで、それよりも下流は絶壁に近く恐らく無理。結局、先月と同じルートでオコナイ沢の15M滝上から尾根越えで本流に出た。

河原を歩いて左にカーブすると間もなく左から枝沢が入っており、そのすぐ先が深場になっている。左壁沿いを泳いで突破するが、先月よりも長く泳がされたような気がした。すぐに次の深場に差し掛かるが、光の加減のせいか結構浅く見える。左壁をへつれるだけへつって泳いで突破しようとしたが、へつって行くうちに手前から見たより深くて流れが速いことが分かり一旦引き返す。へつった左壁のスラブの末端まで行ければ何とか突破できそうなので、スラブ手前を登ってスラブ真上にブッシュに支点を工作して懸垂下降した。最初はここから強引に突破する算段だったが、間近で見てみると左壁水際にスタンスがあってへつりで突破して右に屈曲した先のゴルジュに突入することができた。

段差の小さな落込みをいくつか過ぎると、ゴルジュの壁の間に大きな岩が挟まっているのが見えてきた。天狗橋の前座みたいなのがあるのかと思ったが、近づいてみるとそこが矢沢出合で大岩は天狗橋であることが分かった。先月は右岸をコウゲ滝まで巻いたので、出合までの距離感がつかめなかったが、二つ目の深場を越えた先のゴルジュに入るとすぐだとまでは思わなかった。

ゴルジュに足を踏み込むと天狗橋が見えてくる

天狗橋の直下には2M滝が懸っている。左側の細い水流を背中で浴びてテーブル状の岩に乗りあがる。先には大きく抉られたようにハングした右壁のせいで暗いゴルジュが続いている。一旦腰上まで水に浸かった後落込みを過ぎると、筒状の空間の下部を釜が占有しヒョングった10M滝の水流が飛沫を舞わせながら勢いよく落ちている。取り付けそうな弱点はなく、天狗橋まで引き返して中間尾根に取付く。中間尾根を少し登ったところで矢沢側にバンドがあったので、これを辿ってみる。テラス場に張り出した先には対岸の壁が手に届きそうなところに見えている。今ゴルジュから這い上がってきたところでなければ、足下に20Mの深い亀裂があるとは思えない長閑な光景だ。落ち込みは左手に見えていたので、腰上まで浸かった深場の真上あたりだろうか?さらに上流側にバンドをトラバースしていくと、錐で削り取られたような断崖に阻まれ、スイッチバックして上のバンドに乗ってその上を越える。ようやく10M滝が見えてきた。10M滝の上部は幅の狭い亀裂となって水流が隠れるように6Mくらいの滝が懸っており、その上に釜を擁する3M滝、さらに小釜と落込みを連ねた樋状の流れが続いていた。バンドは次第に広がってきてなだらかな樹林の斜面となり、釜を持った5M滝を右に見ながら進んで滝上の河原に降りた。

天狗橋とその直下に懸る2M滝
天狗橋の奥に続くゴルジュ
ハングした両壁の間から滝が見えてくる
ゴルジュの最奥に懸る10M直瀑
10M滝からゴルジュを引き返す
天狗橋 右側が高巻きルート
高巻きルートから見える対岸の壁
高巻きルートから見下ろしたゴルジュ最奥の10M滝

遡行を開始するとすぐに右、次いで左に曲がってハングした短いゴルジュとなって大岩から落ちる小滝が懸る。いずれも釜を持った3M、2Mの滝を左から越えると開けたゴーロになる。谷は右にカーブして谷幅が狭まるが依然ゴーロが続く。右側には逆層のスラブが続く。左から12Mの滝を懸けて流れ込む枝沢、水流を二分して両門の滝のような相を見せる小滝を過ぎ、左壁がリッジ状に張り出して屈曲した先に懸る2×4の2段の滝は左から取付いて中段で水流をまたいで上部をへつり気味に登る。水流をヒョングらせて釜に注ぐ4M滝とそれに続く4×6の滝は手前左岸ルンゼから巻いて懸垂で滝上に降りる。2M滝を過ぎるとゴルジュは直角に右に曲がり、深い釜に流れ込む2×4の斜瀑とそれに続く釜を持った6M滝を右から越える。さらに水流を二分した2M滝を過ぎると袋小路状の壁に塞がれ、左側からヒョングッた幅の広い10M滝が懸っている。滝の正面に立ってみると、水流は左寄りから右壁に向かって跳ね上がっている。位置から察するに地形図に載っている滝だと思ったが、意外に落差がなかったのでこの後さらに大きな滝が続いているのかとも思った。この滝は右岸から巻いて上流側の草付を上部のブッシュを支点に懸垂下降した。

しばらく単調なゴーロが続いて距離を稼ぐと、ゴルジュは右に曲がり斜瀑が続くようになる。雰囲気から持場沢を遡行した際に下降した沢が近いことを予感した。最初は5×5で左側の緩いスラブを登る。次の8×10は遠目には難しそうだったが左側を小さく巻き気味に越えて、そのまま続く8×8と三つ続く小滝のうちの二つもまとめて越える。釜を持った三つ目の小滝を右から越えると、一つの釜に本流の5M2段樋状の滝と枝沢の滝が流れ込んでいる。5M2段の先に5×8の斜瀑が続き、左側には見覚えのある大岩があった。左壁沿いから大岩の上に登ると果たして持場沢を遡行した時に泊まった小さな砂地に出た。

今回はもう少し先まで行きたいので、この快適な砂地を通り過ぎて先へ進んだ。持場沢出合を過ぎてすぐにゴーロ滝を右に見てやり過ごし、釜を持ったY字状の5Mも左から遠巻きに過ぎる。3段の小滝が流れ込む末広がりの釜まで進んだが、滝の上流50Mくらいのところに雪渓があって冷たい空気が漂っていたので、ここで遡行を打ち切った。少し戻って右岸に斜面上部の岩壁が崩れ落ちたと思われる岩が堆積した下部にあった大岩の際の砂地にツェルトを張った。まだ持場沢出合から大して進んでないが、ここまでも幕場適地が非常に少ない上に、この先は雪渓が残り一層望み薄なので仕方がない。

 

16日(曇のち雨):
3段の滝を越えると下から見えていた雪塊は崩壊後の雪渓でブリッジをなしていなかった。左側に大岩のある2M滝を過ぎると、末端付近がスノーブロックに埋め尽くされた雪渓が架かる。残っているブリッジは何とか持ちこたえそうだったので足早に潜り抜けると、ゴルジュの入口に7M2条の滝が懸っていた。少しガレた斜面を登って左壁の上の傾斜が緩くなったところをトラバースする。足下にはゴルジュが続いているが底の様子は見えない。滝を懸けて本流に注ぐ枝沢に出ると、本流に捻じれた6Mくらいの滝が見えた。枝沢を少し登って対岸のブッシュ帯をトラバースする。足下に3M~6Mの滝が懸っているのが見えており下降できなくもなかったが、上流側でゴルジュが左にカーブしている陰から白い湯気が漂い出ているので雪渓が架かっていると思ってトラバースを続ける。

カーブの先が見えてくるとやはり雪渓が架かっている。末端付近にはスノーブロックが散乱し、雪渓自体は末端はおろか中間も何か所か亀裂が入って途切れている。潜ったり乗ったりするには不安定に思えたので、上流側末端まで巻き続けることにした。右岸側壁は比較的ブッシュが少ない踏跡にも見えるバンドが断続的に続いていたので、巻いている割にはいいペースで進んでいるかのように思えた。巻いている途中3度程足下から凄まじい雪渓の崩落音が響いてきた。末端が近づいてくると樹林帯が付近に続いているようにも見えたが、ガスに視界を遮られてはっきり見ることができない。下降気味に進路を取り始めた直後、ブッシュ疎らな急斜面に遮られて下降した分以上に登り返す。出合からすぐのところで二俣に分かれる1160Mの枝沢を二俣の上で一本一本横断した後、一時の晴れ間に見えた光景の記憶を辿って下降気味に進路をとると、またも絶壁に阻まれて高度を上げる。高度を上げながらトラバースしていくと比較的下部までブッシュが続いていそうな小尾根になったので、そこを下降していくと1200M枝沢出合に降りてきた。前半はペースよく進んだが、後半はアップダウンが多くなり、植生も灌木が煩くなってきたためペースが落ちて、沢に戻ったのは14時近かった。

上流へ行くほど傾斜が増してきて平坦地が減ってきそうなので、既に適地があればそこに幕場を構えるつもりで遡行を再開する。渓相は相変わらず両岸に岩壁が続くものの谷幅の広いゴーロで、点々とたかだか5Mくらいの滝が懸っている。しかし不思議なほど平坦な所が見当たらず、意に反して高度が上がってくる。1345M右岸枝沢(清水沢)出合付近にはスノーブロックが転がっていたが、ブリッジはなかった。この辺りから一層斜度が増してくる。

1425Mで左岸に枝沢を分け、5M滝を越えると幾分狭まったゴルジュになる。概ねゴーロ続きではあるが、出てくる滝が良くない。2条の水流それぞれにCSがある3M滝を過ぎると4MCSと10Mが続く。4MCSは難なく緩くなった右壁を登って10M滝の脇まで続くテラスに乗ったが、10M滝は確実なルートが見つからない。左壁は小さな凹凸はあるがかなりリスクが高そうで、水流部分はつるつるで論外、残るは水流右側の大岩かそれと右壁の間を登ってCSを越えるかのように見えた。何度か両ルート下部を試登した後、大岩の正面の明瞭だが外傾した凹凸を手掛りに越えた。一息つくかつかないかの頃8M滝に阻まれる。ここも際どかったが左岸枝沢の滝を登って張り出した左壁の裏に大石を支点にして懸垂下降して越えた。右手に大岩があって滝のようにも見える枝沢を見ると8MCS滝に阻まれる。CSは2M以上あり、その下部はぽっかりと空間になっていて登るのは無理。引き返して大岩のある枝沢を登る。本流に戻っても幕場にできそうな所は期待できないので、藪の中にでもツェルトを張れる程度のところがあればと思って枝沢を詰め上がった。

水が涸れたあたりで左岸の笹薮の中に生える樺の木を目指して登っていくと、小尾根を跨いだ先にハゲ地が見えたので下降してみる。しかし見下ろした感じよりも傾斜が急で泊まるのは無理だった。さらに下方に笹に覆われるものの斜度が緩そうな所があったので降りてみると、何とかツェルトを張れそうだった。

設営中は蚋が雲のごとく飛び回る。夜は荷物も自分も下方にずり落ち、ツェルトまでも50cmくらい移動したものの、何とか灌木の根本を利用してコンロの水平を保って火を熾し食事も摂ることができた。雨に降られて服が濡れていただけに、ツェルトを張れて中で着替えて過ごせたことは有難かった。

17日(晴):

まともには眠れるような状態ではないので、うとうとしながらも夜通し雨と風の音を聞きながら過ごして早めの朝食を摂った。この場所が登山道直下なら登山道に上がって下山していたかもしれない。しかし尾根を見上げると数百メートル藪を漕がないと登山道には出れそうもなかった。

前日登ってきた枝沢の源頭をトラバースしてその右岸の尾根を下降する。100M以上下降して尾根の上流側の枝沢に下降しようとしたときにカメラが無くなっていることに気付く。カメラはストラップでポーチに繋いだうえでポーチの中に入れていたが、ストラップのジョイント部から先が無くなっていた。ハードはともかくこれまで撮った写真を失うことは非常に心残りではあったが、この藪の中を探しても見つかる可能性は極めて低いので諦めて下降を続けた。枝沢に懸垂下降し、枝沢は出合の斜瀑の右岸の緩いスラブから出合の上流で本流に懸っている小滝の落口に降りた。

本流は相変わらず急なゴーロが続いており、やはり幕場になるようなところはなかった。間もなく1680Mで左壁に5M滝を懸ける本流と真っ直ぐに牛が首へ詰め上がる枝沢が分岐する。本流には出合の滝の先に、対岸から見えていた感じでは難しそうな滝が二本程懸っていたが、枝沢を詰めて牛が首で登山道に上がることにした。枝沢では途中5Mの滝を左岸の草付から巻き、源頭部は左手の岩峰の基部が藪が薄そうだったので遠回りして登山道に出た。源頭部のルート取りははずれで、真っ直ぐに笹薮を突っ切って登山道に出た方が速かったと思われる。

早川のつきあげで靴を履き替え、湯ノ島小屋とトンネルの間にある沢で食事ついでに沢靴を洗って駐車場に戻った。

 

遡行図

 

※本山行でカメラを落としてしまったため、本山行中に取った写真はありません。文中に挿入した写真は後日三杯汁沢を遡行した際に撮ったものです。


山行最終日:2019年9月17日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
14日:実川駐車場(7:50)-裏川堰堤(8:45)-要所口(10:30)-櫛ノ倉沢対岸段丘(13:00/15)-400M枝沢横断(15:50)-ブナ入ノ平(17:30)
15日:ブナ入ノ平(6:40)-下降・引き返し(7:20)-オコナイ沢横断(7:55)-裏川535M付近(10:15)-矢沢出合(11:10)-600M付近(12:05/25)-政一ノ滝(15:10)-持場沢出合(16:15)-830M付近(16:30)
16日:830M付近(6:00)-1200M付近(13:50)-1585M枝沢出合(16:30)-枝沢源頭付近(17:30)
17日:枝沢源頭付近(6:40)-1680M枝沢出合(7:00)-枝沢遡行-牛が首付近(8:45/55)-早川のつきあげ(9:45/55)-月心清水(10:50/55)-登山口(11:45)-実川駐車場(14:30)
地形図:大日岳
報告者:長島

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