白川 七森沢

先週に引き続き飯豊連峰の沢である。今回は三日間の行程で頼母木川を予定していたせいもあって同行してくれるメンバーはなく、単独での山行となった。前回の山行から間がないことや台風15号の関東地方直撃のせいで疲れが抜けていないのと、前日までの雨の影響による増水を懸念して、幾分小規模な白川へと計画変更しての山行である。
山行前日は、計画書を急いで作成してアップしたり、荷物をまとめたりであわただしい準備を終えて、20時半過ぎにようやく車を出すことができた。どうしようもない眠気のため途中で3回ほど仮眠して、翌7時頃に大日杉に到着する。道も整備されて、小屋付近もこぎれいに開けていて気持のよいところだ。

23日:

支度を整えて、大日沢に架かる小橋を渡って大日杉登山小屋を左手に見ながら「この先の橋は渡れません」と書かれている看板が立つ小道へ入っていく。

白川を渡る

白川左岸のこの小道を終わりまで辿ったところで徒渉して、右岸の踏跡を辿ると20mほど高くなったところで軌道跡くらいの広さの平坦な山菜道に合流する。次第にボサが多くなってくるが踏跡はしっかりしており、約40分でひがしたき沢出合へ至る。

入渓点付近の流れ-少し増水しているらしい

水量は特に多いようではなかったが、苔跡からは15cmくらい増水しているように見受けられる。だとすれば普段はあまり水量がないのかもしれないが、先週三国小屋付近の水場が枯れていたことを思えばうなずけなくもない。こぐら沢を過ぎて沢筋が左へ曲がった辺りで、狭まった岩壁の間から奔流する4m滝を左岸の樹林帯に上がって巻くと、かれまつ沢出合となる。

神滝-名前がついているが小さな滝だ

かれまつ沢が正面に真っ直ぐ伸びており、本流は左手に5m滝となって流れ込んでいる。大岩のように見える右壁を登って出合の滝を越えていくと、次の5m滝も登れず左岸を巻く。ゴルジュ状になって沢筋が左に曲がると、勢いよく奔流するナメ滝が懸かり、落ち口付近の水勢が特に強そうだ。沢床左側の巨岩と壁の間を絡みになってバックアンドフットで登ると、大岩の上は平坦になっていて簡単に荷揚げできる。ここから平凡な流れが続き、ゴーロになってくると間もなく七森沢と四森沢の出合になる。七森沢は滝を懸け、四森沢はこの先もゴーロが続いている。

二俣から少し入った所に懸る10M直瀑

出合の滝10mは右壁を登ってブッシュを掴んで落口に立つ。続く7m滝はスラブ状の右壁を登れ、ナメ滝、3m幅広滝を越えると深い釜を持った4m2段が登れずに左岸を巻く。880m付近で沢筋が左に曲がるあたりでは、左岸を幾筋かの水流が細い滝を成していて、その先では小さなゴルジュが形成されている。ゴルジュ出口の3mハング滝は右岸を巻いた。いくつか小滝を過ぎて、8m2条を右から登って右岸に(1:2)の枝沢を分けると、両岸とも雪崩の爪痕生々しいゴルジュ帯となる。

荒涼とした側壁のゴルジュが続く

枝沢が懸ける滝を見ながらゴルジュの底を行くと、8m滝を左壁から登る他はゴーロ歩きに終始して奥の二俣に至る。両俣ともにゴルジュが続き、左俣は奥に小滝を連ねて、さらに左に屈曲して落差のある滝を懸けているように見受けられる。右俣は出合から3m、10mと滝が続いている。

七森沢の二俣 出合に懸る滝はなかなか悪い

出合の10m滝は直登は無理そうで、右を登るか左を巻くかである。安全策なら両俣を分ける尾根の先端リッジを登って樹林帯に取り付くのがよさそうである。しかし左岸の岩壁が気になり、ここを空身で登ることにする。中段からが悪く、左手で横向クラックにジャミング、右手で甘いホールドにパーミングといった具合で辛くもこなして、最後にお決まりの荷揚げをした。5mクラスの滝をいくつか越えると、右に屈曲して12m滝が懸かる。

15M滝 遠目にはなかなか厳しそうだが・・・

正面ルンゼを登ってトラバースして落口に抜けると、小滝が続いた後に15m滝直瀑となり、左岸ルンゼからブッシュ帯まで登って高巻く。さらに前方に同規模の滝がかかるので、高巻きのトラバースを続ける。最後は草付の中にスタンスを探しながらクライムダウンして沢床に戻った。8m滝を二つ越えると、次の筒状の釜を持った8m滝は登れず右岸を巻くが、巻いている途中でさらに筒状の空間に水流を落とす12m滝が見えたのでこれもまとめて巻いた。

側壁の傾斜が緩み緊張感から解放されてくる

この辺りまで来ると滝の落口では両岸の傾斜が緩く、沢床への戻りは楽になってくる。この後、連続する6m、4mをまとめて右岸から巻くと、ところどころ小滝が懸かる平凡な流れとなり、最後は藪漕ぎなしに主稜線から派生する尾根上に出た。
尾根上から主稜線登山道まではたいした距離ではないが、蔓草の絡まった樹木の藪を抜けるのはそれなりの苦労を伴い、30分間のらりくらりと藪の相手をして登山道に出た。結局奥の二俣から先に幕場適地はなく、稜線まで詰め上げてしまった。切合小屋のテント場にツェルトを張って、遅い夕食でこの日の行動を終えた。

24日:

昨晩は足元が冷えてほとんど眠れなかった。少し明るくなるのを待ってから朝食を摂って撤収にかかる。
計画段階では四森沢下降を考えていたが、七森沢のような滝場があると下降はかなり辛そうなので、このまま登山道を降ることにする。大日杉コースはなかなか気持のよい道が続き、登ってきた沢筋を見下ろしながら2時間40分で大日杉に下山した。大日沢で沢靴を洗った後、車のドアにツェルトを掛けて干したりして帰宅後の後片付けの簡略化を図った。白川荘で入浴し、山都の宮古地区へ足を伸ばして蕎麦を食した後に帰路に着いた。
奥の二俣までは比較的高巻きも楽だったが、右俣に入ってからはかなりいやらしい高巻きを強いられる滝が多かった。実川ほど難しい草付はないが、雪崩で荒れた両岸の巻きは不安定な浮石をいかに避けて通過するかも大きなポイントだったと思う。四森沢は地形図や出合の様子からはゴーロが続くようにも思えるが、果たしてどんな渓相だったのだろうか。

 

遡行図

山行最終日:2011年9月24日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 最上川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
23日:大日杉(7:30)-ひがしたき沢出合(8:10)-二俣~七森沢・四森沢出合(10:00)-奥二俣(12:10)-主稜線から七森沢・四森沢出合に伸びる枝尾根(15:50)-登山道(16:20)-切合小屋(記録なし)
24日:切合小屋(7:00)-地蔵岳-大日杉(9:40)
地形図:飯豊山・大日岳・岩倉・川入
報告者:長島