前川 松ノ木穴沢~下追流沢

17日(雨)

西会津の道の駅では雨は上がっていたが、弥平四郎に向かうにつれて雨になる。駐車場でしばらく様子を見るが止む気配はない。前日かなりの降水量があったはずなので、未だに雨が上がらないとなると前川本流の遡行は無理だと思い、初日に下追流沢出合まで行く予定を変更して、松ノ木穴沢まで行くことにする。

登山口の気温は20度を下回っている。登りで上昇する体温と相殺して暑くもなく、寒くもなくといったところだが、時折吹き付ける強風には寒さを感じた。一旦巻岩山まで登って、少し戻った所から松ノ木穴沢へ向かってブッシュ帯を下降する。

両岸からボサが張り出した沢形が出てくるが、水の流れはない。少しずつ水が流れるようになって沢らしくなってくると小滝がいくつか出てくる。5Mの滝を左岸から巻き、3M前後の滝を過ぎるとナメ滝となって、右岸からの枝沢を(3:1)で併せる。

ボサが張り出した沢型に降り立った
5M滝

合流直後に2M滝が続き、さらにナメが傾斜を増して8M滝となって落ち込む。8M滝は右岸から巻いた。次の8M滝は下部に続く三つの滝もまとめて左岸を巻いて下降する。目標に定めたところよりもやや下流に降りたため少し戻って巻いた滝を確認した。下降点の標高はだいたい990Mで、滝が懸っていたのはここまで。以降は平凡な流れが出合まで続いた。途中800M付近で右岸から水が湧いていたので、一夜の飲料水を取水した。

左岸から(2:1)で枝沢を併せるまでは滝が懸っていた
中流部から出合までは退屈な下降が続く

前川本流は予想通り増水しており、徒渉可能なところはほとんどない。幕場にできそうなところを見繕いながら上流の大淵を左岸から巻いたところまで行ってみる。結局出合付近に戻って、小高い石混じりの砂地を整地してツェルトを張った。大淵の流れ出しの辺りで水深を図ってみたところ、平水より25~30cm増水していた。

増水した前川本流

夕方は時折雨がぱらつくものの大方あがった。昼寝をした後17:30頃幕場周辺の水位を確認してみると15cmくらい引いているようだった。

18日(晴)

雨はあがって快晴。川の水位も平水か幾分多い程度になっていた。

出合付近 ほぼ平水に戻った

幕場を後にして大淵は手前で徒渉して右岸の壁をへつって通過する。石高く積み上がった河原はそのまま入り鳥ノ子沢出合へと続いている。出合の左岸には小高い平らな砂地があり絶好のビバークポイントになっている。

広い河原を徒渉しながら進むと次第に側壁が切り立ってくる。小滝が注ぎ込む深い淵は左壁沿いを泳ぐか右を巻くかである。7年前に井谷さんが左壁沿いを泳いで突破した淵のようにも思えたが、違うようにも見えた。泳ぐとすると、流れ込みから取付けそうな壁の辺りまでが流れが強そうで、壁の形状も確実に取り付けるという程のはっきりしたスタンスやホールドは見つけられない。この時期にしては気温が低く、先のことを考え左岸を巻くことにしたが、これがかなり悪かった。途中から空身で登って、荷揚げする。取付きから10Mあたりの木の根元から1.5Mくらいのところにカラビナがかかった残置スリングがあったが、この1.5Mは支点が作られた時からの木の成長分だろうか。上流側の下降点にも苔生した残置スリングがあった。

左岸を巻いたがかなり悪かった

この先淵を二つ右から巻くと河原状になりビバーク適地が見られる。3M滝が流れ込む大きな淵を左から巻くと、河原となって正面に40Mの滝を懸ける枝沢を見て流れは右に折れる。河原状の流れを進んで、左右に曲がった後少し深くなったところを通過すると、下追流沢がゴーロで出合う。

3M滝が流れ込む大淵
下追流沢出合

出合から少し入った河原にはまだあたらしい焚き火の跡があった。最近本流を遡行したパーティがあったのだろう。河原は長くは続かずゴルジュに変わる。壁間いっぱいの深い淵に勢いよく注ぐ3M2段は左から巻くが見た目より悪い。懸垂13Mで続く2M滝の上に降りたが、30Mロープ1本で来てしまったことに少し不安になった。続く蒲鉾の断面のような形に水流を広げて落ちる8M滝は左側が斜上バンドになっていて簡単に越える。深そうな瀞は流れが緩いので水に浸かって直進していくと意外に浅くて拍子抜けする。

深い淵に注ぐ3M2段の滝
深そうでそうでもなかった淵

右に滝を懸ける枝沢を分けると、しばらく開けた河原となる。緩いS字を描く河原を過ぎて4M滝を越え、深い釜に注ぐハングした8MCSを右から巻くと850Mで右岸に滝を懸けた枝沢を分ける。

滝を懸けた枝沢の出合から先でゴーロとなる
8MCS

右手に崩落した斜面を見るとナメ滝帯となる。再び河原となると900Mで右手にゴーロに伏流した枝沢を分ける。左壁が抉れた釜の10M滝を左から巻くと、群れ泳ぐ尺イワナを見ながら縦長の淵の右側水中バンドを進む。

8×25ナメ滝
ナメが続く
3M滝と左壁が抉れた釜の10M滝
10M滝の左手前を少し登って斜上バンドをトラバース

950Mで左岸枝沢を分けると、左側が緩いスラブ壁の10M滝が懸る。滝が断続するゴルジュとなるがそれ程悪い滝は懸っていない。7M滝を左岸に重なる大石をザックを踏み台にして越え、右側に大岩を配した落込みを越えたところで、10M滝を左岸から巻いていくが、ゴルジュが左へ折れた先にYの字とIの字を並べたような水流の8M滝が見え、これが登れそうもなかったので、8M滝の上を目指して大きく巻いた。

左側が緩いスラブ壁の10M滝
長く続くゴルジュの入口付近に懸る8M2条の滝
草付スラブに挟まれたゴルジュ中間部
10M滝
Yの字とIの字を並べたような水流の8M滝

続く6M滝は左岸凹角スラブ状を登るが、見た目より斜度があって悪かった。釜に注ぐ4M滝は泳いで取付けそうでもあったが、左岸が緩くなっているので高巻くことにした。左岸を登った所から上流を眺めると、やっかいそうな連瀑(6M・10M・3M・8M)が見えたので、ここも連瀑の上流を目指して大高巻きした。

巻いた連瀑帯

依然ゴルジュが続くが、谷が浅くなり滝も3~4Mくらいの斜瀑が多くなってくる。右奥へと狭まっていく淵の左側に流れ込む6M滝を右岸ブッシュ帯から巻くと開けた河原になり、右岸に滝を懸けた枝沢を分ける。幕場適地を探しながら遡行を続けて1200M付近に台地状の砂地を見つけてツェルトを張った。砂地には流木が余るほどあり、労せず薪を確保することができて、一人ながらも盛大な焚き火ができた。

ゴルジュは続いているが少し開けてきている
3~4Mの滝が中心だが変化に富んでいて楽しい
2MCS
ゴルジュ末端に懸る6M滝
6M滝を越えると開けた河原になる
快適な河原の中の平坦地

19日(晴時々曇)

焚き火を再燃させて火にあたり、少し遅めに出発する。

右、左に枝沢を分けると一旦小ゴルジュになって正面に滑り台状の岩を配した少し厄介な小滝と格闘する。再び河原を歩くと、右俣が12Mの滝となって合流する(1:1)の二俣となる。

河原を過ぎると露岩帯になる
厄介だったミニゴルジュの深い釜の小滝
二俣に懸る右沢の12M滝

左俣は小滝に続いて、2M-4M-4Mと続く3連瀑が懸り、右側のリッジ状を登るが、さらに右側がすっぱり切れ落ちた亀裂上の谷になっているので高度感がある。奥行き40MくらいのV字の草付ゴルジュの奥に左6M-右8Mの二条の滝が懸り、これを越えるとスラブの連瀑が目の前に広がる。水流右側から取付いて二段目の滝を左から、三段目と四段目は右側を巻き気味に越える。上部にはさらにナメ滝が続いている。

3連瀑
スラブの連瀑

ナメ滝を越えるとだいぶ水流も細くなり、間隔を置いて懸る滝も難しいものはない。1500M付近で湧水を見つけて取水したあと、1585M付近の枝沢出合ではほとんど水流もなく本流も辛うじて沢形がある程度なので、左岸の枝沢から登山道に出た。枝沢に入った後は礫地を繋いで登れたため、思ったよりもあっさりした藪漕ぎで登山道に出ることができた。

8M2条の滝
正面にコブのようなピークが見えてきた
登山道に向かうボサが被った窪

 

遡行図:松ノ木穴沢下追流沢

山行最終日:2018年8月19日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
17日:弥平四郎登山口(7:50)-巻岩山(10:10/10:20)-松ノ木穴沢出合(14:05)
18日:松ノ木穴沢出合付近(6:25)-下追流沢出合(8:50)-850M付近(12:00/12:20)-1100M付近(15:50)-1200M付近(17:10)
19日:1200M付近(7:10)-1400M付近(8:50)-登山道1715M付近(9:55/10:10)-弥平四郎登山口(13:30)
地形図:大日岳
報告者:長島