長走川 小面沢~雨乞沢・与兵ェ沢~上鱒沢

今年いっぱい長走川流域の沢に通い続けたが、遡行対象として挙げた本流域の沢は今回の与兵ェ沢が最後となる。
当初は実川大古沢から与兵ェ沢にアプローチすることを考えていたが、先週小面沢を下降できなかったため、長走川流域の沢をまとめて遡下行することにした。そのため、長走線を辿るのは先々週で最後にするつもりでいたが、中一周で早々に同林道を辿ることになった。

山行の前日までは気温が低い日が続いていたが、予報によると山行予定日はかなり気温が上がるようなので、防寒用の衣類を省き、テントをツェルトにするなど荷物を軽量化することができた。

7日(曇時々小雨)

前日確認した阿賀町の天気予報では、前日の雨に続き当日午前中まで雨が残るようだったが、黒崎ICで車中泊して起きたときには雨は止んでおり、津川ICを降りた時も雨は降っていなかった。天候によっては午後か翌日まで入山を遅らせることも視野に入れていたが、当初の計画通り長走川へ向かうことにした。

先々週と同様に林道壁山線起点手前の広場に車を停めて長走線を歩く。曇っていて日差しはないものの肌寒さはない。長走川へ向かって最後のヘアピンカーブを曲がってから200M程進むと下流へ向かう山道が分岐している。最近入渓者が多いのか、山道も以前よりだいぶ踏まれているように見受けられた。壊れた吊橋の下では、深く緩くなった流れに数匹の岩魚がゆらゆらと泳いでいる。山道は2本の小沢を渡るが、二本目の小沢を渡った辺りで踏跡が不明瞭になる。しばらく沢に沿って登ったあと尾根の先端へ向かってトラバースしていくと、本流と大面沢を隔てる尾根の先端手前のコルに出る。山道はコルから反対側にまっすぐ降った後大面沢上流方面へ向きを変えるが、そこから大面沢へ向かって直進すると間もなく大面沢に出た。出合までは一投足のところだ。

大面沢を少し下降して本流に出た

大面沢出合から小面沢出合までは本流を下降する。地形図には毛虫記号が記されているので、泳ぐようなところがあるかもしれないと警戒していたが、比較的開けていて左右に断続する河原を縫う瀬が続いている。何カ所か深い所はあるが、右岸の岩壁上がバンド状になっており簡単に越えられたため、膝上を濡らすことなく小面沢出合まで来ることができた。

小面沢出合までは河原歩きか岸をへつって行ける

小面沢は小滝を連ねて出合っているが、予想はしていたもののそれ以上に水量が少ない。小滝を越えると流れは右へ向きを変え、その後左へカーブしていくあたりに3Mと4Mの滝が続く。これらの滝を過ぎるとすぐに倒木が詰まって形成された2Mの堰があり、その先延々と単調なゴーロ状の渓相が続く。

小面沢出合
出合から3~4Mの滝をいくつか越える
短い滝場の後はゴーロが続く

800M付近で両岸がV字の草付を呈し、沢床に岩盤が露出して2~4Mくらいの滝らしいところが出てくる。この間3級程度の岩登りといった感じにになるが、長くは続かずまたすぐに単調なゴーロの渓相に戻る。

大面沢に小面沢・・・納得できる渓相と言えば、確かに・・・
源頭近くに小滝がちらほら懸っている
尾根の直下までこんな感じ

980M付近で水が涸れ、990Mを雨乞峰方面へ向かう右側の窪へ進む。次第にボサが被ってくるが斜度はそれ程急になることもなく雨乞峰から20Mほど小面峰方面へ降った辺りに詰め上がった。

雨乞峰からやや小面峰方面に高度を下げた辺りに出て、雨乞峰のやや南方に詰め上がった

ブッシュを掻き分けて小面沢と大面沢を隔てる尾根に出ると、左手に雨乞峰山頂と思われるピークが今立っている位置よりわずかに高い位置に見えた。踏跡があるわけでもなく雨乞沢を本流の窪の源頭から下降したいわけでもないので、詰め上がった地点から尾根の反対側へ向かって下降を開始した。

雨乞峰のピークを踏むことなく雨乞沢へ向けて下降

ブッシュを伝って降りていくと雨水の通り道のような跡に出て、やがてそれが窪へと続いていく。涸れた窪どうしが次々と合流しているためなかなか水流が現れないが、820M辺りで右岸から水流のある窪を併せる。820M~720Mの間に4M、6M2段、4Mと三つの顕著な滝がかかるが、いずれも簡単に下降でき、それ以外は小面沢同様にゴーロの渓相が続いている。下降開始から1時間40分で出合まで下降し、そこからは大面沢の開けたゴーロを下降する。

三つほど滝があったが難しい所はなかった
ゴーロが続く 岸には草地が広がる
大面沢に出た あとはゴーロを降って山道に戻るだけ

山道から大面沢に下降してきたところから往路を辿って林道に出て、本流右岸に渡る橋の袂にツェルトを張って一日目の行動を終えた。

8日(曇時々晴)

朝食を終えてそろそろツェルトをたたもうかという頃、ツェルトの横を軽トラが通り過ぎて行った。ツェルトをたたんで荷物をまとめて、軽トラの後を追うように入渓点を目指した。

山道の終点で長走川に入渓すると、軽トラの主と思われる先行者が上流へ向かう姿が見えた。作業着のような衣装に白いヘルメットを装着して、ほとんど空と見受けられるザックを背負っている。竿は持っていないようなのでキノコ採りだろう。足跡は与兵ェ沢出合の河原の砂地にも残っていたので、さらに上流へ向かったものと思われる。

与兵ェ沢の出合は至って貧相で、この沢に果たして滝などあるのかと思わされる。開けた本流から小さな支流に踏み込むため、さすがに両岸が迫ってくるような感じは受けるが、しばらく平凡な渓相が続く。少し奥へ踏み込んでいくと、少し開けてきて沢床には古いワイヤーが埋まっている。この辺りでもかつては林業が営まれていたということか?

与兵エ沢の出合
流れは平凡だが両岸からの圧迫感がある

2M滝に続いてナメの小滝を過ぎると右手に枝沢を分ける。沢筋が緩く右へ左へとカーブすると頭上を樹林に覆われた鬱蒼とした雰囲気になる。右手にハングした低い岩壁が見えてくると、小滝に付いて倒木が詰まった樋状の3M滝が懸る。幾分ゴルジュっぽくなってきてナメ滝とナメが断続すると、3Mの滝を懸ける枝沢が右へ分かれる。流れが屈曲する中に末広の淵が二つ続くと、沢は完全にゴルジュの様相を呈してきて、左岸には取付ける弱点がない険しい壁が続く。

頭上を樹林が鬱蒼と覆う
倒木が詰まった3M滝
ゴルジュになりそうな雰囲気

ゴルジュの入口には5M滝が懸っている。飯豊でよく見る形の滝で、垂直近い壁の浅い窪みを一条に流れている。両岸は凹凸乏しく頼りない草がちょびちょびと生えている。右岸のルンゼを少し登ってブッシュ帯をトラバースした後、隣のルンゼを下降して沢に戻る。小滝を過ぎ、次の4M滝は小さなスタンスと外傾が僅かに緩いフェースを頼りに、フェルトのフリクションぎりぎりで左壁を斜上して越える。傾斜の緩い滝を一つ越え、2.5M滝はルンゼから右岸を小さく巻き、6×8のナメ滝を越えると4Mの樋状の滝が懸っており、その壁間上方に40cmくらいの石が挟まっている。水流をまたぐように登ると釜の先に4M滝が懸っており、左壁の斜上バンドから巻気味にこれを越えると両岸の壁が高さを増してきて、井戸の底のような空間が広がる。

ゴルジュ入口の5M滝
頭上にCSがある4M樋状の滝
高い壁に囲まれた井戸の底のような空間

谷はゴーロとなって左へカーブしており、その先には6Mの滝が懸っている。しかしこれは枝沢であり、本流は右壁に35Mの滝を懸けて落下している。滝は平板をいくつか組み合わせたような壁を流下しており、ホールドになりそうなところは極めて少ないように見受けられる。右壁は断層ができて隆起しているように滝身より高くなっており、左壁は草付混じりのスラブだがスタンスやホールドが期待できるような形状ではない。枝沢の滝は左から越えられそうだが上が見通せないため、安全策をとってバンドを斜上した4M滝の近くまで戻って比較的傾斜が緩い右岸のルンゼから樹林帯に登った。樹林帯を斜上して枝沢の上部を左岸へ渡り、大滝の落口近くへ続いている小尾根を下降して大滝上に立つまで一時間強を要した。

35Mの大滝
右岸をぐるりと大きく巻いていく

大高巻きを終えて、しばらく平穏な渓相が続いてくれないかという気分だったが、早速15Mの逆相の滝が現れる。先ほどの高巻きの下降点まで戻れば簡単に巻けるがまたも大高巻きになってしまうので、小さく巻けるルートを探すと、右壁にちょっと傾斜がきついが窪状のラインがある。ブッシュまで到達するまでが遠いが、窪の上端から先も足場があって思ったより悪くなかった。幾分谷のV字が広がってくるが、まだ息を抜ける程ではない。正面に見えてきた4M直瀑は遠目に見た相とは反対に、右壁にしっかりしたホールドがあって簡単に越えた。

15M滝
15M滝落口

滝上正面にはガレルンゼが続いており、流れは左頭上から15M滝となって流下してくる。右岸小尾根状から簡単にブッシュ帯に取付いて、滝を右手に見ながら登って、続く2M滝の上まで巻いた。すぐにスラブ状の5Mが続き、右壁に取付くが思った以上に滑っていたので、右側に寄ってブッシュ伝いに登る。続く2Mスラブ滝を越えると、樹林も沢まで降りてきて平凡な渓相になった。

15M滝
右岸の巻きルートから見た15M滝

まだ悪場があるかもしれないと思いながら遡行を続けたが、ゴルジュや滝場が現れることはなくゴーロが続き、やがて狭まった急峻な岩窪へと続いていた。岩窪を抜けると貧弱な草が生えた程度の急斜面になり登るのが難しくなってくる。右岸に逃れてブッシュ伝いに稜線に詰め上がった。

ゴーロが続きやがて急峻な岩窪になる

稜線上から振り返ると長走川を取り巻く山々が見え、反対側には大古沢と実川を取り巻く山々が見渡せる。尾根上にはうっすらと踏跡があるが、ブッシュに阻まれているところが多くて前進に苦労する。特に石楠花が密集しているところや、進路を妨げるように伸びている松の枝は煩い。上鱒沢に近づくにつれて次第に踏跡がはっきりしてきて歩が捗るようになるが、上鱒沢への下降点のコルまでの約1kmを進むのに2時間以上を要した。

手強い藪の尾根

与兵ェ沢と上鱒沢を分ける枝尾根を分けて尾根が南へ向きを変えたところで、上鱒沢へ向かって尾根をはずれて下降する。ブッシュを伝って急な斜面を降りていくと、ブッシュに囲まれた草付斜面が見えてくる。ブッシュ無しに下降するにはかなり急なので、草付斜面を回り込むようにブッシュ帯を進むが、草付斜面はさらに傾斜を増して右へカーブして落ち込んでいる。右岸ブッシュ帯を辿って直立した樹木が並ぶ小尾根を下降していくと、倒木おびただしいゴーロが延々と続く沢の様子を見渡せる。尾根の末端が急峻になる辺りで、沢へ向かってブッシュ帯を下降し、念のため直径15cmくらいの木の幹にロープを掛けて懸垂30Mで沢に降りた。

急な草斜面となって落ち込んでいる
木立のある小尾根から下流を見下ろす

小尾根から見下ろした通り延々とゴーロが続き、あわよくば暗くなる前に出合まで行けるかもしれないという気にさせられたが、510Mあたりまで下降してくるとゴルジュに落込む8M-3Mの滝に行きあたる。時刻も17時を回っており暗くなってきているので、ここで行動を打ち切って、滝の手前の河原を整地してツェルトを張った。

ほとんど滝らしい滝もなく倒木が多いゴーロが続く
滝場の手前の砂地でこの日の行動を終了

9日(晴のち曇)

荷物をまとめた後にもう一度滝の様子を見に行く。足下の滝の先にも滝があるようで、視界から水流が宙に消えている。懸垂でゴルジュの底に下降した場合、次の滝の落口付近に支点になるようなものはなさそうで、巻けるかというとちょっと距離が離れていて判断が難しい。また足下の滝の釜に降りてしまうので、右岸を巻くことにする。

幕場直下の滝の下に続くゴルジュ
右岸を巻いて下降する

ツェルトを張った河原から15M程戻ると右岸の傾斜が緩くなっており簡単に登ることができる。沢から離れないようにブッシュ帯を下降していくと小沢に出て、小沢を下降して沢に戻る。上流側を見ると、幕場直下の滝の上から見えていたと思われる滝12Mとその下に5M滝が続けて懸っていた。

12Mと5Mの滝

ゴルジュはここで終わっており、曲がりくねってはいるが平凡な沢を下降する。途中5Mと4Mの滝が続けて懸っており、5Mをクライムダウン、4Mは5M滝に立て架かっていた倒木を支点に懸垂下降した。それ以外にこれと行ったところはなく、下鱒沢を併せると間もなく本流対岸の白い河原が見えてきて出合に出た。膝下を濡らす程度で本流を徒渉すると、山道終点が目の前に見えている。

もう一つの滝場に懸る5Mと4Mの滝
河原が続き下鱒沢を併せる
樹林を割る流れ
本流が見えてきた

林道に出て、途中で山栗を拾い、ゆっくりと壁山線分岐に戻った。

 

遡行図:小面沢・雨乞沢与兵ェ沢・上鱒沢

山行最終日:2017年10月9日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
7日:林道壁山線起点(7:40)-上ノ峠(8;35)-山道分岐(9:20)-大面沢(10:10)-小面沢出合(10:40/50)-雨乞峰山頂付近(13:35)-雨乞沢出合(15:15)-山道取付点(16:20)-長走川右岸への架橋点(17:30)
8日:長走川右岸への架橋点(6:45)-与兵ェ沢出合(7:55)-35M大滝基部(9:55)-700M付近(12:15)-稜線(13:25)-上鱒沢下降点(15:30)-上鱒沢入渓(16:25)-510M付近(17:15)
9日:510M付近(7:00)-出合(8:00)-上ノ峠(10:15)-林道壁山線起点(11:15)
地形図:日出谷・蒜場山
報告者:長島