長走川(上流部継続遡下行)

長走川の山行も終盤に差し掛かり、今回は上流部の主だった沢を継続遡行・下降して一気に巡ってきた。台風を避ける目的も含めて18-19日を新潟のホテルで休養と山行食料の補給にあてて、20日早朝に林道長走線へ向かった。8月に黒森沢を訪れた際に林道がかなり荒れていて、自分の車で走るには限界を感じたため、今回は標高280Mの林道分岐手前にある広場に車を停めて、以遠は歩いてアプローチすることにした。林道は前回ほどは荒れてないにしろ、やはり相当深く掘れたところがあるので、徒歩の方が安心だ。

9月20日(曇のち雨)

林道終点から続く山道を辿ると、黒森沢を渡ってから70~80M、鱒沢出合付近で踏跡は河原へと降っている。ここから杉ノ沢出合までは過去一往復半しており、勝手は分かっている。約1時間5分で杉ノ沢出合に着き、そこからも平水ならば悪場と言えるほどのところはなく二俣に到達した。

二俣 左の大滝沢へ進む 右は白滝沢

出合から続く小さな深場の右を通り過ぎ、狭くなってくる谷を行くとすぐに正面に大きな釜を擁する15M滝が現れて遡行を妨げる。少し戻って右岸に僅かに小尾根状に突き出たところの右側の浅いルンゼに取付くが、下部5Mくらいが悪くて高度を上げるのに苦労する。右に斜上するように断続するスタンスと左に小尾根状に生えたブッシュのいずれに進むか迷ったが、小尾根のブッシュを目指して左へトラバースする。ブッシュを掴んで少し登った所でトラバースに入るが、滝身が近くなると露岩壁に遮られて再び少し高度を挙げて壁を上部から迂回して滝上の露岩帯に降り立った。

二俣までの渓相から一変する
15M滝

滝上からはしばらく開けて穏やかな渓相が続く。両岸が切り立って水流を圧迫してくると、瀞となりこれをへつって過ぎると、右上がりの層状の摂理の焦茶色の壁の間に3×4の滝が懸っている。ここから先のゴルジュ帯を材木廊下と呼ぶらしい。気温が上がらず水に浸かりたくなかったので、釜の手前で右壁を登って滝上のゴルジュに降り立った。ゴルジュは全体に左に傾いており、深い所で腰上くらいに見えたが、股上以上の深さがありそうなところは左壁をへつった。途中と出口付近に2M滝が懸っている。

滝上の渓相
釜に注ぐ3×4の滝
材木廊下は左に傾いたゴルジュ

ゴルジュを抜けると赤抜ゲ沢が(1:2)の水量比で出合う。出合から100Mくらいの間、谷はまっすぐに続いており、両岸ともに見上げるとブナ林が見える。釜を持った4M滝が右壁から落ちており、これを越えると小滝を連ねるゴルジュ帯と続いている。ゴルジュは次第に深くなっていき、両岸圧迫されて狭まった深場の奥で左壁の上方から白い飛沫となって水が落ちている。右岸のルンゼを登ってやや大巻きに巻いていくと、滝は20Mくらいあるように見え、ゴルジュを基部まで突っ込んで行けば、滝の右側からブッシュ帯に取付いて登れるようにも見えた。

赤抜ゲ沢出合
出合から続く真っ直ぐな谷
小滝を連ねるゴルジュ
両岸が圧迫してきた谷の奥に大きな滝が見えてくる
左岸巻きルートから見た滝の全貌

小尾根状に張り出したところから滝上に降りると、やや開けており河原状の流れとなる。左岸に岩壁が見えてきて沢が左へ曲がっていくと、右壁から勢いよく水流を叩きつける大滝と、正面に伸びているガレルンゼが目に入ってくる。近づいていくと白い岩壁の殿堂といった感じの空間となり、正面にも細いながらも20Mが、左壁はスラブを流下する15Mの斜瀑が懸っていた。15M斜瀑の水流脇のスラブ帯を登ると、細い20M滝と15M斜瀑は右岸の二つの支流の水が併さった後再び分かれたものでることが分かった。また、本流の20M滝の上には2Mくらいの滝が3段続いていた。スラブからガレに踏み込み、二つ目の支流の手前で左岸の草付からブッシュ帯に取付く。

河原に降り注ぐ大きな滝と右側のガレルンゼ
20M大滝

小滝を連ねた上に降り立つと、ちょうど沢が右に折れており、その先には焦茶色の岩壁のゴルジュとなっている。今度のゴルジュは右に傾いており、色も傾きも材木廊下と対極をなしているかのようだ。滝を越え深場をへつって、最後に8M3段の滝をハングした右側壁を回り込むように越えると沢が開ける。

大滝上の右に傾いたゴルジュ
8M滝
8M滝を越えると少し開ける

穏やかな河原状の流れの中を行くと、720M付近に70度くらいの斜度の白い壁を滑り落ちる美瀑が懸っている。この滝を右から簡単に巻いても尚穏やかな渓相が続く。右岸に枝沢を分けると、幅50cmくらいの瀞となり3×5のスライダー状の滝が左から注ぎ込んでいる。この滝上からゴルジュとなって、右岸に枝沢を分けた後深い釜に注ぎ込む1M程の落込みでついにワンポイントの泳ぎを強いられた。水勢の弱い右側に飛び込んだが岩壁を這い上がれず、結局落込み左側の水面下にスタンスを探りあてて突っ張りで越えた。続く滝は登れそうもなく、左岸に取付くと上流方面にラゲン滝沢が見えて来たので、そのまま出合まで巻いた。

白い壁を滑り落ちる12Mの美瀑
3×5の斜瀑の先でゴルジュになる
小さな落込みだが釜は深い
左岸巻きルートから見えるラゲン滝沢

高巻きルートから見たラゲン滝沢は、源頭まで滝もなくひたすらゴーロが続いているかのように見えた。出合は大きな雪渓の残骸でふさがれており、ラゲン滝沢に少し入った辺りにも壁のみとなった雪塊が残っていた。ラゲン滝沢左岸の段丘の雪壁の横にツェルトを張って初日の行動を終了した。ツェルトに潜り込んでしばらくすると、風が強くなり雨が降り出した。

ラゲン滝沢出合付近
本日の幕場

9月21日(雨のち曇)

雨は早朝まで断続的に降り、暗く肌寒い中で幕場を撤収して後にした。ひらけているのは出合付近だけで、すぐにゴルジュになる。深い釜を擁する2M滝が懸っており、浸かりたくないのと滝も難しそうなので、左岸から巻くことにした。ゴルジュが途切れたところで沢に戻ると、またすぐにゴルジュとなる。それほど悪い所もなく、次第に開けてくると樹林帯が沢床近くまで降りてきて落ち着いた渓相になる。

ラゲン滝沢出合の先のゴルジュ
高巻終了点付近
8M滝

茶色い壁の10M滝を右から巻き、続く10×20は水流の右を快適に登り、7M2段は上段が難しそうなので右から巻く。沢に戻ると正面に10M前後の滝が続くがこれは枝沢で、本流は右に折れて7M滝を懸けている。いくつかの滝を越えると再び狭いゴルジュとなって水深もあるので右から巻いた。次第に源頭の雰囲気を漂わせる開けた草付が広がるようになり、6M2条の滝を左から巻いて越えると二俣となる。水量比は(2:3)で、左俣は7M2段の滝を懸け、右俣は平凡なゴーロで出合っている。ゴーロの先はナメに小滝と小釜が連続し、小滝を連ねて尾根の直下まで窪が続いている。

10M滝
10×20ナメ滝
7M滝を右から巻く
7Mの滝を懸けて出合う枝沢と本流
7M滝の上の渓相
深い釜の滝を擁するゴルジュ
7M滝 左を小さく巻いた
7MCS滝
6M2条の滝
7M2段の滝を懸ける左俣
ゴーロの右俣
源頭付近まで小滝が続く
稜線直下

窪から足を踏み出すとすでに尾根の上という感じで、笹と灌木を縫って南下すると20分程でタアバナ沢への下降点に出た。

タアバナ沢への下降点付近

灌木帯を下降していくと標高差約40Mでタアバナ沢の窪に降り立つ。苔生した岩盤に小さな涸棚が続くが問題になる所はなく、5M3段滝手前からわずかに水が流れ始め、その基部から湧水帯となり水量を増していく。6M2段をクライムダウンし、10M2段を懸垂下降すると(1:1)で左岸方面からの流れと合流する。ボサっぽい中に2M~4Mの滝が続き、やがて6Mの滝が続きその三つ目を懸垂下降する。8M2段の滝をクライムダウンすると1150Mでタアバナから流れてくる沢と合流する。

8M2段滝の下でタアバナから流れてくる沢と出合う

それほど切り立ってはいないがゴルジュ状を呈してきて、クライムダウンが難しそうな3×5を左から巻いて、もう一つ滝を過ぎてから懸垂で沢床に戻る。谷幅の広いゴーロとなって左にカーブしていくと、再びゴルジュへと続く。丸い釜へと流下していく10M滝の落口から右岸を巻いて、連続する2MCS-2Mの下に下降すると、今度は白いスラブ壁から次第に斜度を増して落ちていく滝が懸っている。左岸寄りのブッシュ帯に絡んで斜度が一気に増すところまで下降し、灌木に捨て縄をかけて支点を作り滝下で合流する隣の沢に懸垂下降した。見上げると白い岩盤に端正な一条の筋を描く美しい15M滝だった。

8×10のナメ滝
3つ続く6M滝を降りてきたところ
釜に注ぐ10M滝
白い岩盤の大きな滝の落口
基部から見た白い岩盤の滝 15M
滝の基部で左岸から流れてくる沢と合流している

ゴーロの沢筋を下降していくと釜に落込む8MCS滝が懸っている。左岸に取付きやすそうなルンゼを見つけたが、登るにつれて斜度が増してくる上に、ブッシュが疎らな草付で足場もよくない。慎重に登りそしてトラバースして何とかブッシュ帯に取付いた。対岸にはさっき懸垂下降した滝が一層美しく見えていた。CS滝下で比較的ブッシュが沢床近くまで降りているところを目指して下降して、最後は懸垂で沢床に降りた。標高はそろそろ900Mになろうかというところ。地形図では谷が開けて斜度も落ちてくるあたりだ。幕場を探しながら下降していくと、左岸に流木の山を乗せた小高い砂地を見つけてツェルトを張った。

巻いた8MCS滝
この日幕場にした小高い砂の台地

前夜とはうって変わって、雨にも降られず焚き火もできて快適な夜を過ごした。

9月22日(曇時々晴)

幕場からはしばらく概ね開けた河原状の渓相が続くが、いくつかしっかりと落ち込んだ滝があって懸垂下降した。何度かゴルジュになりかかっては少し開けるといった渓相の変化を繰り返すと、ハングした岩壁に囲まれた釜へと落ち込む12M滝が懸っている。左岸を小さく巻いてブッシュ伝いに降りていくと意外にも懸垂ぜずに沢床に戻る。続く6×5を左から簡単に下降すると、左岸から6Mの直瀑を懸けて引上ゲ沢が出合う。12M滝上からは暗いゴルジュに見えていたが、意外に開けている。引上ゲ沢を出合の滝の頭越しに見上げると、滝を連ねて一気に高度を上げている様子が窺えた。

この日最初の4M滝
ナメから落ち込んでいく6M滝
左岸から滝を懸けて流れ込む枝沢と4M滝
ゴルジュになったかと思うと・・・
間もなく開け・・・
ハングした壁に囲まれた釜に注ぐ12M滝
出合に懸る引上ゲ沢の6M滝
6M滝越しに仰ぎ見た引上ゲ沢

両岸が岩壁になりややゴルジュじみた渓相となり、大きな釜を擁する滝を二本下降すると、カーブした幅50cmくらいの樋状の流れとなって大きな釜に注いでいる。この釜の左岸にある小さな砂地は、先週の山行で幕場にしたところだ。

カーブして淵に流れ込む幅50cmの緩い流れ

8M滝を左から巻き、白い岩盤を流れ落ちる6×18の水流の左側を下降して、右へと曲がり続ける沢筋を行く。大釜の10M滝を右から巻いて、ブッシュを伝って大釜に続く瀞の脇に降りると、すぐに大釜の2M滝が懸っており左側を懸垂下降した。やがて高く切り立った岩壁に挟まれた狭隘なゴルジュとなって北西方向に向きを変えていく。ゴルジュが断続して小滝も懸るが、簡単にクライムダウンできるか巻くことができる。谷が開けてきて特に右岸が台地状になると右岸から顕著な支流を併せる。

10M滝を右岸から巻いて釜の流れ出し付近に降り立つ
大釜の2M滝
狭隘なゴルジュ
谷が開けてきて右岸が台地状になる

樹林が沢床近くまで降りてきて、河原が点在する穏やかな渓相がしばらく続いた後、再びゴルジュが断続する。函状の釜に注ぐ5×10から先のゴルジュ帯を右岸から巻き、沢筋がクランク状に折れると10M滝を懸けて深い縦長の釜に落込んでいる。釜の先には大きな倒木が突き刺さっており、その先にも滝が続いているように見える。右岸のブッシュ帯に取付いてなるべく水線を見ながら小さく巻こうと試みるが、程なく尾根の先端に行き当たって二俣に降りてきた。

河原が点在するようになる
5×10の滝となって函状の釜に注ぐ
倒木が逆さまに突き刺さった深い淵

ここから赤抜ゲ沢を目指すが、15M滝と材木廊下を擁する二俣から赤抜ゲ沢出合までの区間をバイパスして赤抜ゲ沢にアクセスすることにした。二俣から本流を降って標高480Mで右岸から出合う小沢に入る。特に険しい所はないが、沢の規模の割には意外に滝が懸っているように思えた。出合から標高差100M程のところで水が涸れたが、藪漕ぎなく尾根まで詰め上がった。

二俣の僅かに下流で本流に注ぐ宗五郎沢
藪沢かと思ったが意外にすっきりしている
小滝もちらほら
藪漕ぎもなく尾根を乗っ越せた

尾根を乗越して反対側の斜面を入り混じった灌木と笹を掻き分けながら下降していくと、細々とした窪が現れ水が流れ出す。両岸はブナ林の斜面だが、窪の方が下降しやすそうだったので窪を辿っていくと尾根から約20分で赤抜ゲ沢に出た。赤抜ゲ沢は両岸を段丘状のブナ林に挟まれ、水際は河原となっており穏やかな渓相を見せている。

赤抜ゲ沢へ続く細い流れ
赤抜ゲ沢が見えてきた

山行初日にデポした酒を回収しに荷物を置いて出合まで往復する。穏やかな渓相が続いていると持ったが、下降するとすぐにミニゴルジュとなり小滝と釜が連続してきて、空身で来たのはまずかったように思えてきたが、大したところはなくまもなく出合に着いた。右岸の灌木に吊るされたビニール袋を回収して下降してきたルートを戻った。

赤抜ゲ沢出合まで下降して先日デポした品を回収
出合からは小釜を擁する小滝が連なる

広い河原とブナ林の段丘が広がり、先へ進むよりここを幕場にした方が快適に思えたが、このときの時刻と後日の行程を考えるともう少し先へ進んでおきたい。ザックを背負って上流へ向かう。穏やかな渓相も100Mくらいで終わり、2Mの滝を越えると両岸草付の幅1.5Mのゴルジュへと変貌する。この顕著なゴルジュはまもなく8M滝をもって終わるが、それ以降露岩帯に小滝と釜が数珠繋がりとなっている。

枝沢から降りてきた辺りに広がるブナの台地と赤抜ゲ沢
間もなくゴルジュとなる
露岩帯に数珠繋がりになった小滝と釜

一旦滝場が途絶えて右岸に滝を懸けている枝沢を分けると小滝を挟んで8Mの滝が2本続き、後者は右岸を小さく巻いた。その直後に中央がリッジ状に突き出た逆相の層状を呈する3条の15M滝に阻まれて左岸を巻いていく。滝上は大小多くの滝を連ねるゴルジュ帯となっており、途中二回下降を試みたが結局ゴルジュの末端で沢に降りた。

8M2条の滝
8M滝
15M3条の滝
15M3条の上に続く滝もまとめて左岸から巻いていく
かなり深そうな釜に注ぐ8M滝の落口付近で沢に戻った

下降点より先では沢床付近までブッシュが茂り、小滝と釜が続く。岩の隙間から水を噴出している8M3段の滝を右から巻いてから少し進んだところで、右岸の細い枝沢の先に砂の台地を見つけて幕場とした。

8M3段の滝の落口から壁の隙間を覗く
本日の幕場

9月23日(雨のち曇)

明け方ぽつぽつと雨粒がツェルトを叩いていたが、出発する頃にはほぼ止んだ。河原があるようなところはすぐに終わり、すぐにミニゴルジュが断続するようになる。どんよりとした空の下で気温が上がらない状況において、切り立った壁の間いっぱいに水を湛える釜と小滝が連続する渓相には少しうんざりする。

幕場付近
9M滝

樋状の流れを過ぎ2M滝を越えたところで、続く1.5Mの小滝が擁する釜をどうにもへつることができないと見て右岸を巻くことにした。滝を越えたところで下降しかけたが、その先の屈曲部に懸る滝が悪そうだったので、この滝の先の小滝の上まで巻いて懸垂で沢に降りた。

1.5M小滝が注ぐ釜
枝沢が7Mの滝を懸けて本流に注ぐ辺りに下降した

降りたところは相変わらずゴルジュで、枝沢と本流がともに滝を懸けて合流していた。出合の4Mの滝を過ぎるとしばらく草付ゴルジュが続いた先に18Mの滝が現れ、その上にさらに3M、4Mの滝が続き、左岸のルンゼに取付いてまとめて巻く。

草付の壁から大きな滝が見えてくる
18M滝の全貌

その後、ゴルジュが右に曲がると1.5~2Mに狭まった壁の間に深々と水を湛える深場となっている。釜に浸かるのを避けるため左岸に取付いて釜を巻こうとしたが適当な下降点が見つからず巻を継続していくと、ゴルジュが屈曲した先に難しそうな滝が連なっている。下降するにも下降点を見繕うのが大変だし、滝も登れないかも知れないので、小尾根伝いに地形図上で三俣状になっている880M付近まで大きく巻くことにした。

沢に戻るがすぐに深場に阻まれる
滝を連ねる狭隘な流れ
完全に尾根に上がって大高巻きを敢行

目的の尾根を下降していくと一旦左岸の枝沢に降り立ったが、ゴルジュに釜と滝が続いていたので対岸に取付いて出合まで巻いていくと、出合に懸る本流の6Mの滝上に降り立った。しかし次の6M滝が登れず、すかさず左岸を巻いていくと対岸に滝を連ねた枝沢が目に入った。880M付近は三俣ではなく、左岸に枝沢を分けた後に間をおいて右岸の枝沢が分かれているようだ。

一旦枝沢に降り立つ
本流に懸る6M滝の落口に降りてきた

右岸枝沢出合の上流で沢に戻ると、久々に河原らしきものが見られる渓相になった。さらに2MCSとそれに続く滝をまとめて巻き、その後10Mと15Mの滝をまとめて巻くと、940Mの二俣となる。水量比は(1:1)だが右俣が本流とみられる。杉ノ沢を目指すため左俣へ進む。左俣には地形図では滝もなさそうに見えるが、それ程難しくない小滝が続いている。1000Mの(1:4)の分岐で左の枝沢に入り、さらに1050Mで左へ進むと間もなく水が涸れて広い尾根に出た。

両岸共に低くなってきた
10M滝
15M滝の落口
940Mの二俣
まだ簡単な小滝が続く
1050Mで左に進むと間もなく涸れる

尾根を正確に辿ろうとすると1035M点までは結構曲がりくねっていて、方角以上に距離を測るのが大変そうなので、南西⇒南と二段階で方角を定めて尾根を辿った。1035M点付近からは踏跡に合流した上にほぼ西南西を目指すだけなのでルート取りは簡単だった。高立山手前のピークで杉ノ沢と赤抜ゲ沢を分ける尾根が派生するピークであることを念入りに確認した後に尾根の南側の沢へ下降を開始した。

稲葉の平付近

ピークから急な斜面を南東方向にトラバースしながら200Mくらい下降したところで沢に出た。短い枝沢ながらも10Mクラスの滝5本を含めて結構滝が多く、下降に時間を要する。高巻き5回、懸垂下降2回の後ようやく杉ノ沢本流が見えてきた。最後の10M滝上の右岸の太い木には残置シュリンゲがあったが、いつのものか分からない上に右岸を降りると飛沫を浴びるので、左岸の灌木に支点を作って懸垂下降した。

杉ノ沢枝沢の下降を開始
10M滝
8M滝(右岸高巻き)
8M滝を左岸から巻く
残置があった10M滝
出合が見えてきた
出合に懸る枝沢の5M2段の滝

出合から下流は昨年下降して様子が分かっているので気楽である。5M滝を昨年残置した捨て縄を支点に懸垂すれば、目標地点の淀ノ沢出合付近まで滝はない。幕場適地を見繕いながら淀ノ沢出合の少し先まで下降したが、結局少し戻って出合から50M程上流にあった砂地にツェルトを張った。到着時刻が遅く焚き火はしなかったが、空気は乾いていて濡れていた装備も乾き快適な一夜となった。

出合直後の5M滝は前回訪れた時の捨て縄を利用
淀ノ沢出合やや上流の河原に泊まった

9月24日(晴)

朝からほぼ晴れて気持ちがよい。願わくば全日こういう天気であって欲しい。幕場を後にするとしばらくゴルジュはあるものの滝らしい滝も避けられない釜もない。10M滝へと続く狭いゴルジュの入口で右岸に取付き10M滝を巻いて、10M滝に続く3M滝の釜の縁に懸垂下降した。5M2段の滝の左岸側の壁をクライムダウンすると深場となっているが、深い所は左岸のバンドから巻くことができたので、結局腰上まで水に浸かることなく通過できた。河原が断続する平凡な渓相となった杉ノ沢を下降して出合に至り、往路を辿って山道に戻った。

正面から朝日が差し込む杉ノ沢を下降
長走川本流との出合

これまでこの川で他人を見かけたことはなかったが、この日は林道で軽トラとすれ違い、橋の袂に駐車されているバイクを見かけ、ワゴン車に乗って釣りに来ていた二人組を見かけた。引き返してきた軽トラに声を掛けられて、車を停めた林道分岐まで同乗させてもらった。軽トラの主はしばしばこの林道を走って長走川へ足を運んでおり、今回は山葡萄を採りに行ったそうだ。予定よりも一時間以上早く駐車地点まで戻ってきたので、干し物をしながらのんびりと昼食を摂った後に帰路に着いた。

車を停めた林道分岐の広場

どことなく藪沢の印象がぬぐえなかった下流~中流部の支流に対して、今回訪れた上流の沢は露岩のゴルジュ帯も多く開豁な印象を併せ持っていた。特に大滝沢は、適度に緊張する悪場がある反面、穏やかな渓相や美しい大滝に心和むところも多く、長走川随一の秀渓といっていいだろう。白滝差は若干変化に乏しくやや冗長さを感じなくもないが、二俣から引上ゲ沢出合の手前まで続くゴルジュ帯は滝は少ないながらも雰囲気は満点である。赤抜ゲ沢は悪場を凝縮したような沢で、出合付近のブナの台地を過ぎると上流部まで開放的な雰囲気が感じられる所がなく、やや変化に乏しい印象を受けた。全体に極悪の高巻きは少なく、大滝沢の最初の15Mの巻きと取付きと、白滝沢の8MCSの高巻きが悪かった以外は、飯豊としては平均的な高巻きの悪さである。

久々に5日間厳しい沢を継続遡行・下降して、充実感を味わった山行になった。

 

遡行図:大滝沢白滝沢(タアバナ沢)宗五郎沢赤抜ゲ沢杉ノ沢(支流)・本流(黒森沢出合~二俣)

山行最終日:2017年9月24日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 阿賀野川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
20日:林道分岐手前広場280M(6:40)-上ノ峠(7:30)-山道分岐(8:10)-林道終点(8:50)-鱒沢出合(9:00)-二俣(10:15)-赤抜ゲ沢出合(12:05)-20M滝上ゴルジュ入口(13:50)-ラゲン滝沢幕場(16:10)
21日:ラゲン滝沢幕場(6:15)-二俣(9:55)-稜線(11:25)-タアバナ沢下降点(11:45)-15M滝下Co910(15:20)-Co835幕場(16:50)
22日:Co835幕場(7:00)-引上ゲ沢出合(9:15)-二俣(13:50)-Co430右岸枝沢源頭尾根(14:45)-赤抜ゲ沢(15:05/15:25)-Co690幕場(17:30)
23日:Co690幕場(6:00)-Co815(10:20)-Co950奥二俣(12:00)-尾根Co1100(12:50)-杉ノ沢枝沢下降点(14:45)-出合(16:35)-Co545幕場(17:30)
24日:Co545幕場(7:10)-10M・3M滝下(9:10)-出合(9:45)-林道終点(10:50)-<林道途中で軽トラに乗せてもらう>-林道分岐手前広場280M(12:00)
地形図:蒜場山
報告者:長島