都沢~大ヤット沢右俣左沢

加治川流域で遡行対象に挙げた沢で最後に残ったのが都沢だ。ここ何年か続けて計画してきたが、天候に恵まれず延び延びになっていた。今回も台風の影響で雨の予報が出ており諦めかけていたが、予定前日から予報が好転したため何とか実施することができた。

2日:曇時々晴

早朝加治川治水ダムに到着する。数台の車が停まっているが、蒜場山か焼峰山に向かった登山者のものだろう。大倉沢右岸の崩落によって通行止めになっている静かな林道を歩いて都沢へ向かう。飯豊沢左岸の道が分岐する辺りにある林から本流へ下降する。ちょうど都沢出合の対岸に降りてきたが、本流は深いうえに流れが速くとても徒渉できたものではない。本流右岸を50M程上流へ向ってトラバースして、小倉沢出合のやや上手の幾らか浅いところで対岸に渡る。それでも水深は腰上あたりまであり流れも相当強いため、辛うじて渡り切った感じだ。

林道から少し降ったところから見下ろした都沢出合
徒渉点付近

左岸は都沢出合まで水深が浅く、露出した岩盤もあって問題なく下降できる。出合は尾根の末端となっており、乗越して都沢へ入渓する。尾根末端には都沢へ向って踏跡があり、千切れたロープが二本ぶら下がっていた。

都沢は沢の規模の割にかなり狭まったゴルジュとなって出合っている。両壁は苔生した垂直の岩壁で陰鬱とした雰囲気を漂わせている。3M程の壁間いっぱいに流れてくる水流に逆らって30Mほど遡行するが、すぐに深場となって先には2Mの滝が懸っている。膝下の流れでも遡行に苦労する程なので、無理して突っ込む気にもならず出合に戻って巻くことにした。

出合付近の都沢

尾根に取付くと尾根にも踏跡があった。足元を見ると左に本流、右に都沢の流れが同時に目に入るほどの痩せ尾根だが、古い残置ロープがぶら下がったちょっとしたギャップを越えると次第に開けてきて、やがて広いブナ林になる。対岸の林道からよく見えていたところだ。都沢を見下ろすと巻いた2M滝の上は少し谷幅が広くなっているようだったが、しばらくゴルジュを見下ろしながら林の際を巻いていった。幾分傾斜が緩くなったところでブッシュ帯を下降して、最後は懸垂で沢に戻った。

降り立った地点の左岸は樹林が沢まで続いていてエスケープ可能だが、右岸を登るのはかなり難しい。すぐに2M滝が懸るが簡単に右から越えると、幾らか落ち着いた渓相となって325Mで左岸に枝沢を分ける。ちょっとしたゴルジュとなり、狭まった壁間いっぱいの深い釜に流れ落ちる小滝と3M滝が続き、左岸を小さく巻いて懸垂で滝上に出る。沢に降りたのも束の間で、間もなく深い釜に注ぐ樋状の激流に阻まれて、左岸を巻きにかかる。少し登ると、2M前後の滝が続いた先に20Mの大滝が目に入ってくる。大滝は登れそうもなく、下降するとこの先取付けるところがなさそうなので、大滝上まで一気に巻くことにする。しばらく高度を上げてトラバースして、滝上に降りそうな手ごろなルンゼを下降するが、大滝の落口を右手に見下ろす崖上に出た。さらにトラバースするとブナの台地となり、懸垂で沢に戻った。

高巻きの後の最初の滝 2M
2M滝を越えた先の渓相
壁の間いっぱいの深い流れと3M滝
高巻きから降りてきた先
深い釜に注ぐ樋状の強い流れ
2M前後の滝が続いた先に20Mの大滝が見えてきた
20Mの大滝
高巻きからの下降点付近

しかし、わずか10M進んだだけですぐに流れの強い深場となってその先に2M滝が落ち込む。懸垂下降したほぼ対岸を疎らなブッシュとわずかな足場を頼りに巻こうとするが、途中からトラバースできなくなり追い上げられる。上流を見ると壁間いっぱいに水を湛える釜とつるつるの滝が続いており、巻くのも難しそうである。眼下のゴルジュを巻くことにしたが、今いる斜面の先はブッシュも疎らなスラブに阻まれていてトラバースはできそうもない。となると尾根まで登って枝尾根から沢に戻るしかない。ブナ林から懸垂で降りてしまったのは失敗だったかもしれないが、それはここまで来てみなければわからなかったので仕方がない。

深場の先の2M滝
右岸から見下ろした2M滝の先の渓相

途中昼食を摂って尾根に出ると、出合から続いていると思われる踏跡があった。太いブナの木には切り付けも見られ、その文字からは昭和50年前後のものが多いように見受けられる。尾根を目指した時点では420M付近に降りる枝尾根を下降しようと思っていたが、思いの外歩きやすいので、中ノ沢出合付近に続く枝尾根へ向かう。この尾根にも踏跡がついていたため、沢に降りるまで難所はないと推測した通り、最後は広いブナ林となって河原に降り立った。

枝尾根を降って穏やかな河原に出た

河原を遡行するとすぐに穏やかな中ノ沢出合となり、さらに20M程先に雨天時の避難場所になる台地を背後に控えた砂地を見つけて幕場とした。

中ノ沢出合の先の砂地

3日:曇時々晴夕方一時雨

しばらく河原が続いてくれればという期待も虚しく、遡行開始早々にゴルジュとなる。最初の4Mは簡単に越えたが、次の4Mは越えるにしても深場にどっぷりつかった挙句大量のシャワーを浴びることになりそうだ。低温注意報が出ている日にそんな遡行はしたくないので、右岸から巻くことにして傾斜が急なバンド状の壁をブッシュを掴みながら登ると、ブナの台地となっていた。

幕場付近
二日目最初の4M滝
ゴルジュに懸る4M滝

しばらく台地の際に沿って谷を見下ろしながら進む。対岸はこちらの台地よりも高く聳える圧倒的な岩壁となっている。足下の流れには大きくはないがいくつか滝が懸っている。10Mの滝が懸る辺りから次第に開けてきたので、台地が抉られたルンゼ状の斜面から沢に戻った。谷が左に曲がると左から枝沢が注いでいる。

右岸ブナの台地からゴルジュの先を見下ろす
枝沢を分けた先の渓相

再びゴルジュとなるが、今度はそれ程の威圧感はない。狭まった中に懸る1.5Mを左側壁から越えると、間をおいて幅広の4M滝を左から越える。やがて右手に樹林帯が降りてくると、釜を持った3M滝とその上に6M滝が続く。3M滝は右壁を登れるかもしれないが6M滝が難しそうなので、左岸を巻いて越えた。そこから沢が左にカーブすると朴ノ木沢出合だった。

4M幅広滝
釜に注ぐ3M滝と続く6M滝
朴ノ木沢出合

出合を過ぎると、短いゴルジュを抜けた後しばらく河原が続く。次のゴルジュは小滝と小釜が連続しており、大きな石が挟まった2M滝の上に引っかかていた流木にスリングを懸けてA0で越えると小滝群は終わり、谷は右に折れて幾らか開けたゴルジュに荒れたゴーロが続いている。倒木や枯草混じりの泥が多く、かなり遅くまで雪渓が残っていたものと思われる。まっすぐに伸びていたゴルジュが小さく屈曲すると、6M3段、8Mと滝が続き、これらを簡単に越えるとゴルジュが終わり平凡なゴーロになる。

小ゴルジュを抜けた後の5M滝
短いゴルジュの先の河原
小滝と小釜が数珠つなぎに連なったゴルジュ
荒れた印象のゴーロ
枝沢に懸る滑り台のような滝
8M滝 ツルツルに見えるが右壁にホールドがある

900Mを過ぎ、右に二本枝沢を分けた後に3M滝が懸り、次の5M滝は登れなくもなさそうだが無理をせず右の枝沢を少し登って巻く。小尾根を越えて5M滝上に出ようとしたところ20M滝が続いており、その中間に出た。スラブ状の右壁上部を登り切ると、再び平凡な渓相になる。次第に水流が乏しくなってきて、稜線まで標高差200Mのところで水が涸れる。2M、10M樋状の枯棚を越え、急な斜面を詰めて行くと蔓草混じりの密藪の尾根に出た。

しばらく単調な流れが続く
5M滝
20M滝
水流が細くなってきた
窪も藪に消えていく

地形図から読み取った以上に南西に詰め上がったようで、大ヤット沢との分水尾根のピークが遠い。この日のうちに下ノ沢出合まで行けるかもしれないという期待は裏切られ、わずか150M程度の尾根の移動に2時間近くも費やして、大ヤット沢の右俣右沢の源頭を横切って右俣左沢の窪に足を踏み入れた頃には15時近くになっていた。

大ヤット沢との分水尾根のピーク

大ヤット沢の源頭は左俣と同様に時折でてくるのっぺりした小滝に苦労する。1200M辺りからはナメ滝が続き、左岸のスラブをトラバースして巻いた。谷が北へ向かって90度向きを変えていく辺りから開けてきて河原状の渓相になるが、1000M付近からつるつるのゴルジュに滝が懸るようになる。

大ヤット沢右俣左沢の源頭
幾分開けてくるがすぐに滝を連ねたゴルジュになる

幕場を期待できる渓相ではなく、さらに悪いことには雨が降ってきたため、右岸の右俣左俣中間尾根に逃げてブナ林を目指すことにした。石楠花が煩い尾根を下降していくと、尾根が二手に分かれ右俣寄りへ進路を取る。両尾根の間の小谷は、地形図で読み取れる900M付近の谷地形へと続いていた。谷地形へと落ち込む手前に下草が少ない平坦地を見つけて幕場とした。雨は一時的なもので、ツェルトを張り終えた頃にはやんでいた。

尾根が窪んでいるところを幕場にした

4日:晴時々曇

尾根の方が沢よりも暖かいようで、中ノ沢出合よりも標高が高いものの、こちらの方が暖かかったように思える。

このまま中間尾根を下降してしまおうかという考えもよぎったが、左俣へ懸垂下降する。下降したところはちょうど5M滝の下だった。20Mも進まないうちに釜を持った2M滝が懸り、さらに滝が続いているようなので、左岸に取付いてブッシュ伝いに下降する。少し開けていそうに見えた辺りに懸垂下降を試みたが、まだ滝が続いていたため途中で登り返してトラバースを続けることになる。右沢との中間尾根末端に出ようと思って尾根状を下降したが、手前の小尾根だったようで、出合の滝の上に降りた。

幕場からの下降点付近
10M滝

右岸から滝を巻いて出合に立つと、右沢には6M3段、左沢には7M3段の滝が懸っており、出合直下も大きな滝となって水流が視界から消えていた。再び右岸を下降して途中から懸垂で降りたが、右岸を滝から離れる方にトラバースすれば懸垂しなくても降りてこられたようだ。

奥の二俣(左沢と右沢)
すぐに落差のある滝となって落ち込んでいる
巻いた滝を振り返る 18M直瀑

滝下からは開けた渓相となりしばらく快適に下降するが、小滝の釜を泳がされ、巨石帯を過ぎると再び滝が続くようになる。ここから再び右岸の中間尾根に取付いて、二俣に懸る右俣と左俣の滝の間に下降した。

再び滝が続くようになり右岸を巻く
二俣に懸る右俣の8M滝

二俣から飯豊川に出るまでは先々週遡行して様子が分かっているので気楽である。二俣の下の連瀑は右岸を巻き、12M、7Mの滝が懸るあたりは小尾根を挟んで滝と反対側の斜面を懸垂下降した。ここも少しトラバースすれば懸垂しなくても下降できたようである。ゴルジュは続くが滝はなく、間もなく下ノ沢出合に着く。わずかに降ると、前回幕場にした砂地があるが、その後の雨で浸食されて少し狭くなっていた。

二俣から下二続く滝を巻いて滝場の先を見下ろす

その先の連瀑は12M滝の落口付近から左岸に取付いて4×8の下に懸垂下降し、続く3M滝は釜に飛び込めば簡単だが前回同様左岸の外傾バンドをトラバースして釜の先に降りた。あとは概ね歩くだけだ。5M滝は左岸にぼろい残置ロープがぶら下がっており登り降りできそうだが、ここを降りると確実に下で水を被るので、前回同様右岸を巻いて台地に直立する太い木を支点に懸垂で降りた。

下ノ沢出合から下流の滝場は左岸を巻く
下流側から二番目の滝4×8の4条の下に降りた

巨岩帯は前回より水量が少なかったため大した苦労もなく通過して、3M滝を前回と同じルートで下降すると飯豊川の流れが目に入ってきた。本流を膝上の徒渉で対岸に渡るが、岩越平直下が広大な河原であることに初めて気付いた。ここに泊まっていくのも気持ちよさそうだと思いつつも、蕨を採りながらゆっくりと加治川治水ダムへ降った。

巨岩のゴーロ帯
出合付近
出合の対岸にある本流の河原

都沢の下流部は強烈なゴルジュで、ほとんど高巻きに終始した。序盤は巻いているとはいえ流れを見下ろせたが、20M滝から中ノ沢までは尾根まで追い上げられ、その間の渓相はごく一部しか目にすることができなかった。ブナの台地から懸垂下降しなければ、もう少し沢寄りのルートをとれたかもしれないが、地形図から読み取れる情報ではないだけに、こればかりは運としか言いようがない。

遡行対象に挙げた加治川流域の支流全てに足を踏み入れたことになる。今更ながらという感もあるが、熊沢も気になって仕方がない。この沢は詰めても他の流域との分水尾根ではないため他の流域からの継続ルートの一部として取り入れることができない。一区切りついたら行ってみたいと思う。

 

遡行図:都沢大ヤット沢右俣


山行最終日:2017年9月4日
メンバー:長島
山域: 飯豊連峰 加治川
山行形態: 沢登り
コースタイム:
2日:加治川治水ダム(6:45)-都沢出合(8:05)-20M滝落口(11:45)-中ノ沢出合(16:00)
3日:中ノ沢出合(6:30)-朴ノ木沢出合(8:30)-750M(10:00)-稜線(13:30)-大ヤット沢右俣左沢源頭部(14:45)-1200M付近(15:30)-右俣左俣中間尾根900M付近(17:00)
4日:右俣左俣中間尾根900M付近(6:50)-奥二俣(8:30)-下の沢出合(10:25)-連瀑下部4×8滝下(11:40)-出合(14:30)-加治川治水ダム(18:05)
地形図:二王子岳・蒜場山
報告者:長島

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